第875回
北京オリンピックの後、中国経済は停滞するのか?

日本ではいまだに
「北京オリンピックの後、中国経済は停滞する」
というようなことを言っている人がたくさんいます。

これは多分、昭和39年の東京オリンピックの後、
オリンピック関連の公共投資がなくなり、
日本経済はいわゆる「40年不況」に陥ったため、
当時の日本と同じ高度経済成長中の中国でも
同じことが起こるだろう、ということなのだと思います。

しかし、北京に住んでみればすぐにわかることですが、
今の中国の好景気に占める
「オリンピック特需」の割合は非常に小さいものです。

実際、これまで中国政府がオリンピック関連施設の
建設に費やした金額は総額で280億元(4200億円)ですが、
北京市の昨年のGDPは9000億元(13.5兆円)、
中国全体では24兆元(360兆円)ですから、
オリンピック関連の建設がなくなったとしても、
それが中国経済に与える影響は
それほど大きくないのではないでしょうか。

中国は「オリンピックを開くから景気が良い」のではなくて、
「景気が良いところに、たまたまオリンピックが開かれる」
という状況なのです。

もちろん、オリンピックの開催に間に合わせるように
交通インフラなどの公共工事は行われています。
しかし、そうした公共工事も
民間企業が行っている不動産開発などに比べれば
たいした規模ではありません。

そしてその交通インフラなどの公共工事も、
最近は「オリンピックに間に合わせよう」
という気力が感じられません。

例えば北京の地下鉄。
以前は「北京の地下鉄はオリンピックまでに10本以上開通する」
という計画だったと思うのですが、
オリンピックまであと2ヶ月ちょっとにも関わらず、
開通している地下鉄はまだ4本。
「オリンピック後も公共工事の量が落ち込まないように、
中国政府がわざと遅らせているんじゃないか」
と勘ぐりたくなるほどの遅れ方です。

そして、それでもオリンピックの後に
中国の景気が落ち込んでしまった場合、
中国政府は既に計画されている
公共投資のスケジュールを早めたり、
今まで引き締めていた金融の手綱を緩めたり、
と様々な持ち球を迅速に投入できる立場にあります。

私はマクロ経済の専門家ではありませんが、
私のようなシロウトが見ても、
北京オリンピックと中国の好景気の間には
あまり関係がないことは明らかです。

これでも北京オリンピックの後、
中国経済は停滞すると思われますか?


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2008年5月23日(金)

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