第877回
「ほとんど起こらないことに備えるなんてムダだ!」

中国は地震に限らず、自然災害に対する備え、
というものがほとんどできていません。
その背景には
「ほとんど起こらないことに備えるなんてムダだ!」
という考え方があるように思います。

例えば、
北京の道路には日本のような排水溝がありません。
確かに北京は乾燥気候ですので、
あまり雨は降らないのですが、
ひとたび大雨が降ると、
街中巨大な水溜まりだらけになってしまい、
歩くのにも一苦労です。

ひどい時には、
幹線道路のアンダーパスに大量の水が溜まってしまい、
水が全て蒸発するまで何日も通行止めになることもあります。

また、冬になると
北京でも大雪が降ることがあるのですが、
大雪が降ってもタイヤチェーンを
巻いている車はほとんどありません。

当然、つるつると滑って事故が多発するのですが、
ドライバーの人たちは、
1年に2-3回降るか降らないかの雪に備えて
タイヤチェーンを買うなどということは
ムダ以外の何物でもない、
と考えているのでしょう。

こんな状態ですので、
北京はちょっとした自然災害があると、
すぐにその機能が止まってしまいます。
北京という街は、
自然災害に対しては非常に弱い街なのです。

自然災害に対して行政が
万全の備えを行うのが常識である日本から見れば
何ともお粗末な話ですが、
「ほとんど起こらないことに備えるなんてムダだ!」
という考え方にも一理はある、と私は思います。

なぜなら、
ほとんど起こらないことに備えるために
湯水のようにカネを使っていたら、
国家予算がいくらあっても足りませんし、
そんなカネがあったら、
もう既に起こっている問題を
解決するために使うべきだと思うからです。

中国の「ほとんど起こらないことに備えるなんてムダだ!」
というスタンスが良いとは言いません。
しかし、日本で自然災害による被害者が出ると、
マスコミが行政の防災対策が万全でなかったことを糾弾し、
行政は人命第一を錦の御旗に
防災対策の公共工事に更にカネをつぎ込む、
というパターンもどうなんだろう、と私は思います。


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2008年5月28日(水)

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