第878回
中国政府はバカじゃない

日本に住んでおられる方の中には、
「中国政府は頭の悪い共産党員たちが
一党独裁体制の権力を振りかざして好き放題やっている」
というイメージをお持ちの方も
少なくないのではないでしょうか。

「毒入りギョーザ事件」や「チベット暴動」に対する
中国政府の対応を伝える日本のマスコミの
表層的な報道を聞いていたら、
そう思われるのも無理はありません。

確かに、田舎の木っ端役人の腐敗は深刻ですし、
共産党中央にも権力闘争に明け暮れて、
「あんた中国をつぶす気か!」とどやしつけたくなるような
行動をとる人もいるにはいます。

しかし、中国政府が打ち出す政策を見ていると、
非常に合理的でわかりやすい上に、
長期的な視野に立った一貫性のあるものが多く、
共産党中央が13億人民の中から選りすぐられた
超エリート集団であることを再認識させられます。

例えば、資源政策。
日本は世界の資源国との外交を通じて
「仲良くして分けてもらう」という政策をとっていますが、
中国は「世界の工場」時代の輸出で稼いだ
巨額の外貨準備で外国の資源会社を買収し
「カネの力で確保する」という政策をとっています。

最近では、中国の国有資源会社が
リオ・ティント、BHPビリトン、アングロ・アメリカンなど
鉄鉱石、石炭の鉱山を持つ資源大手の株式取得に動き、
世界の資源供給が寡占化して、
資源価格が更に高騰するのを食い止める役割まで担っています。

製鉄会社を始めとする日本の産業界は、
中国のこうした政策のお陰で、ずいぶん助かっているはずです。

本来ならば、無資源国の日本は
バブル経済でおカネが有り余っていた時に、
外国の不動産ではなく、今の中国のように
外国の資源を買っておくべきでした。
しかし、長年の買い手市場に慣れきった当時の日本は
「資源なんかカネを出せばいつでも買える」
と考えてそれをしませんでした。

しかしその後、中国を始めとする新興国の資源需要増大により、
資源市場は一転して売り手市場になりました。
いくら仲が良くても売り手も商売ですので、
株主や高く買ってくれる人に優先的に売ります。
今後日本は、
中国に「買い負け」して十分な資源を確保できない、
という事態に陥ることが懸念されます。

こうした中国の国策は、
非常に合理的かつ長期的な視野に立った
判断に基づいて行われています。

国内の安定のためには毎年7-8%の経済成長が必要
→経済成長には大量の資源の確保が必須
→しかし、この売り手市場では資源の大量確保は困難
→有り余る外貨準備で資源会社を買収して
成長に必要な資源を確保、ということです。

中国政府はバカではないのです。


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2008年5月30日(金)

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