第899回
中国共産党はなぜ一党独裁にこだわるのか

私はいつも、中国政府の
内政、外交政策、経済政策を考える時に
「中国政府の最終的な目的は
中国共産党一党独裁体制の維持である」
ということを前提にすると、
全ての政策がすっきりと説明がつく、
というお話をしています。

こう書くと、中国共産党の党員は
一党独裁体制を維持することによって、
ものすごい私腹を肥やしているのではないか、
と思われるかもしれませんが、私が見る限り、
昔と違って今はそんな時代ではありません。

もちろん、昔の共産党の体質を引きずる
田舎の木っ端役人の中には、
地元のヤクザや個人企業の経営者などとグルになって、
人民から搾取している人たちもたくさんいるようですが、
少なくとも共産党中央の幹部は、
毎日プロパガンダという目的のために
国営メディアにずっと「監視」されていますので、
私腹を肥やす時間もありませんし、
もし肥やせたとしても
肥やした私腹を楽しむ時間もありません。

では、中国共産党はなぜここまで
一党独裁体制の維持にこだわるのか。
それは、現時点では共産党の一党独裁体制こそが、
中国の将来の発展と人民の幸せのための
最善の政治体制だからではないかと私は思います。

今から約20年前、1989年に発生した天安門事件では、
民主化を求める学生に人民解放軍が発砲し、
中国は世界中の国々から非難されました。
しかし、もし中国共産党が
学生の要求を呑んで中国を民主化していたら、
国内は大混乱に陥り、20年後の現在、
このような経済発展をすることは、
絶対にありえなかったのではないかと思います。

民主主義諸国の評価では
「改革開放政策で中国の経済発展の礎を築いたケ小平も、
天安門事件で晩節を汚した」
ということになっていますが、
あの英明なケ小平が中国共産党の利益のためだけに
武力弾圧を実行したとは私には思えません。

天安門事件の歴史的な意味は
もっと時間が経ってみないことにはわかりませんが、
後世の歴史家たちは
「ケ小平は天安門事件で民主化を阻止したことによって、
中国に高度経済成長をもたらし、
中国を世界一の経済大国に押し上げる礎を築いた」
と評価するのかもしれません。


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2008年7月18日(金)

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