第900回
中国が民主化したらどうなるのか

私は中国に来るまでは、
民主主義は最も優れた政治体制であり、
世界の独裁国家はすぐに
民主主義に移行すべきだと考えていました。

しかし、中国に来て、
共産党一党独裁政治を見ているうちに、
この国に民主主義を導入するのは
非常にリスクが高いのではないか、
と思うようになりました。
なぜなら、民主主義国家では、
国民1人1人が刹那的な私利私欲で行動するのではなく、
国の将来を深く考えた上で現在の政策を決める
知性と理性を持ち合わせていなければ、
その国は遅かれ早かれ破綻してしまうからです。

中国には9億人もの農民がいると言われています。
中国が民主化され、この全人口の約7割を占める
高等教育を受けていない人たちが1人1票の選挙権を持ち、
自分のポケットにおカネが入る政策には賛成、
おカネを取っていく政策には反対、
という投票行動をとればどうなるでしょうか。

中国は将来を見据えた
一貫性のある政策を実行することはできなくなり、
刹那的な政策で国家の財産を食いつぶしながら
破滅していくのは火を見るより明らかです。

これは株式を上場した企業が抱える問題と
相通じるものがあります。

オーナー企業の社長は、
会社の10年先、20年先の成長を見据えた経営ができますが、
短期の利益を追求するアクティビスト(もの言う株主)に
株を買い占められた上場企業の社長は、
将来の成長を犠牲にしてでも、
今期の利益を最大化する経営を求められるのです。

中国は自分の目の前の利益しか見ることができない農民に
選挙権を与えて自滅への道を突き進むよりは、
共産党が一党独裁体制により
長期的な視点で経済を発展させる方が、
現時点では合理的な選択なのではないかと思います。
そして、その経済発展の恩恵が
徐々に農民に行き渡るようにしてもらう方が、
農民にとっても選挙権をもらうより
幸せなのではないでしょうか。

民主主義は、高等教育を受けた知性と理性を持つ人が
国民の大部分を占める先進国ではうまく機能しますが、
国民の多くの人が高等教育を受けていない発展途上国では、
国を破滅に導くかもしれない
大きなリスクをはらむことになります。
こうした国ではむしろエリートが
オーナー企業の社長のような長期的な視点を持って
国家を経営していく方が、
延いてはその国の国民のためになるのではないでしょうか。

もちろん、独裁体制であるのをいいことに、
その権力を濫用して汚職に手を染めるような
バカタレがいなければ、の話ですが...。


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2008年7月21日(月)

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