第906回
日本代表選手が抱く北京の食に対する不安

毒入りギョーザ事件の後、
日本では「中国の食べ物は全て危険である」という認識が
広がっているようです。
私も日本に住んでいる友人に
「毎日、中国の食べ物食べてて大丈夫か?」と
心配してもらったことがあります。

毒入りギョーザ事件があれだけ連日のように報道されれば、
日本の人たちが「中国の食べ物には全て毒が入っている」
と感じてしまっても無理もないことなのですが、
実際にはそんなことはあり得ません。

確かに、中国の衛生状態は日本より劣りますが、
ほとんどの食べ物は安全です。
私も12年間中国に住んで
中国の食べ物を食べ続けていますが体は至って健康です。
知らないうちに体が蝕まれているんだ、
と言われれば反論はできませんが...。

ただ「中国の食べ物はほとんどが安全である」という事実は、
ニュースとしての価値はありませんので、
報道機関はニュースとしての価値がある
「中国の危険な食べ物」にだけにスポットライトを当て、
その結果、日本の人たちに
「中国の食べ物は全て危険である」という
誤った認識を与えてしまうのです。

こうした誤った認識は、
オリンピックの日本代表選手のみなさんも持っており、
多くの選手が北京の食に対して不安を持っていると聞いています。

しかし、選手村の食事は専用農場の食材を使うなど、
北京オリンピック組織委員会(BOCOG)が
国家の威信を賭けて安全な食べ物を用意しますし、
選手村の外で食事をしたとしても、
私が12年間食べ続けて大丈夫だったものが、
1週間ぐらいしか北京に滞在しないオリンピック選手に
たまたま毒入りの食べ物が当たる、
というのはちょっと考えにくいです。

だいたいがオリンピックの中国代表選手は、
日本で「危険である」と認識されている
中国の食べ物を子供の頃から食べ続けています。
中国の食べ物が全て危険ならば、
中国代表選手は全員体を壊しており、
良い成績など望むべくもないはずですが、
実際は、今回の北京オリンピックでは、
メダル獲得数でアメリカを抜き
世界一になることが予想されています。

こう考えていくと
「ニュースとしての価値」によって選別された報道が、
いかに事実と違った認識を見ている人に与えるか、
ということがよくわかります。


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2008年8月4日(月)

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