第914回
新興国にとってのオリンピックの意味

今回、北京オリンピックを間近で見ていて印象的だったのは、
厳しい規制で生活がかなり不便になっているにも関わらず、
多くの北京市民の反応は
「でも、オリンピックの成功のためには仕方がないね」
というものだったことです。

中国が世界の一等国として認められるためには、
何としてでもオリンピックを成功させなければなりません。
そのためには多少の不便や不利益は我慢しよう、
という雰囲気が今の中国にはあります。

中国のような新興国では、
自国でオリンピックが開催されることは
非常に大きな意味を持っているんですね。

一方の今の日本。
東京は2016年のオリンピック招致に名乗りを挙げ、
6月の国際オリンピック委員会(IOC)理事会では
第1次選考をトップで通過しました。
しかし、オリンピックの東京招致最大のネックは、
「世論の支持の低さ」なのだそうです。

IOCがはじき出したオリンピック開催に対する世論支持率は、
マドリードが90%、リオデジャネイロが77%、
シカゴが74%だったのですが、東京は59%で最下位でした。

東京オリンピック開催反対の理由は、
「財政が苦しいのにオリンピックに大金を使っていいのか」、
「税金は福祉や医療制度など足りないところに使ってほしい」、
「オリンピックが東京に来ていい思いができるのは、
ゼネコンと広告代理店ぐらいだ」などなど。

1964年の東京オリンピックのときには世論の反対はほとんどなく、
誰もが自国でオリンピックが開かれることを喜んだそうです。
当時の日本は戦争で全土が焦土と化してから
20年も経っていない新興国。
今の中国と同じように、オリンピックを自国で開催して
世界に名乗りを挙げるということで
国民も意気盛んだったのでしょう。

既に先進国となって久しい日本。
40年以上前に既にオリンピックは経験済みだし、
今さら国際社会に名乗りを挙げるでもないでしょう、
と国民は考えているのでしょうか。

そう言った意味では、スペインもアメリカも
先進国でオリンピック経験国。
ここはBRICsの一角を占める新興国・ブラジルに、
南米初のオリンピックをやってもらうことが、
その国の国民に一番喜んでもらえる選択なのかもしれません。


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2008年8月22日(金)

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