第913回
オリンピック交通規制の意外な効果

北京オリンピック・パラリンピックの開催に当たって、
北京では7月から交通規制が行われています。
マイカーはナンバーの末尾が偶数の車は偶数の日のみ、
奇数の車は奇数の日のみしか走ることができませんので、
北京の渋滞はかなり緩和され、
空気も心なしかきれいになったような気がします。

北京市が全市18区県の3098人を対象に調査をした結果によれば、
自動車所有者の内、夫婦で車を所有している場合に可能な
ナンバー変更制度を利用しマイカーに乗り続けた人はわずか1.2%。
その他の人はほとんどがマイカーの使用をやめ、
60.4%がバスや地下鉄、24%が自転車、7.3%が徒歩など
他の移動手段を使うようになったとのことです。

このため、北京の渋滞はかなり緩和されましたが、
多くの回答者がバス、地下鉄の混雑が激しくなり、
タクシーも空車を見つけるのが難しくなったとしています。

この交通規制で思わぬ恩恵を被ったのは、
地下鉄の駅に直結したショッピングモールです。
購買力のあるマイカー保有者が
地下鉄を利用するようになったことにより、
こうしたショッピングモールは
売上を大きく伸ばしているようです。

また、今までマイカーで買い物に出かけていた人が
外出を控える傾向も出てきており、
家に居ながらにして買い物ができる
ネットショッピングも好調のようです。
あるネットショッピングのサイトは、
交通規制が始まってから売上が20%も増加したそうです。

今まで増え続けてきた北京のマイカー。
マイカーの数は既に北京の市街地の
自動車インフラのキャパシティを超えており、
マイカーで買い物に出かけても、
ショッピングセンターに行くまでに渋滞で1時間、
やっと到着したと思ったら駐車場の順番待ちで更に1時間、
などという全く便利なんだか不便なんだか
わからないような状態が続いていました。

今回の交通規制でマイカー族は
「バスや地下鉄も思ったほど不便ではない」
ということを再認識したのではないかと思います。

この交通規制は9月20日(土)には終わってしまいますが、
交通規制が終わった後もマイカー族がバスや地下鉄を利用し続け、
北京が見栄を張るためだけに
人々がマイカーに乗る「エゴな街」から、
おカネは持っていても
公共交通機関や自転車を使う「エコな街」に
生まれ変わることを祈っています。


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2008年8月20日(水)

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