第929回
9-10%の持続可能な経済成長

中国政府が計画している景気刺激策の最終的な目標は、
今年下半期の景気減速を食い止めて、
今年の経済成長率を10%前後に
ソフトランディングさせることです。

アメリカの証券会社・JPモルガンによれば、
中国政府が2000-4000億元(3.2-6.4兆円)規模の
景気刺激策を打てば、
今年の経済成長率は10%を維持できるが、
何もしなければ9%を下回る可能性もあるとのことです。

別に9%を下回っても、
今の日本の1-2%の経済成長率と比べれば
十分高度経済成長に見えるのですが、
今の中国では8%台の経済成長は
かなりの危険水域なのだそうです。

昨年のような11-12%の成長では
過熱しすぎですぐに息切れしてしまう。
かと言って7-8%の成長では
失業問題など国内の諸問題が噴き出して大変なことになる。
中国政府はうまく9-10%の持続可能な経済成長を続けていく、
というピンポイントの
非常に難しい舵取りを求められているのです。

しかし、消費税増税に対する国民のコンセンサスを得るのに
5年も10年もかかる日本政府とは違って、
超ビッグガバメントの中国政府には
いくらでもコントロールの方法がありますので、
経済成長率を9-10%に収めて巡航するというのは
それほど難しいことではないかと思います。

中国政府は極端な話、明日からでも
新しい税金を作って徴税を始めることができますし、
減税や財政支出で特定の業界を
集中的に優遇することもできます。
また、許認可権や規制を利用して産業を振興したり、
逆に景気の過熱を抑えたりすることもできます。
共産党一党独裁の中国政府は
誰の顔色をうかがう必要もありませんので、
合理的な判断から機動的な経済政策が打てるのです。

日本ではよく
「中国は一党独裁国家で民主主義国家ではないので、
カントリーリスクが高い」と言われますが、
私は「一党独裁体制は
政府の国内経済に対するコントロールを可能にするので、
中国のカントリーリスクをむしろ低くしている」
と思っています。


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2008年9月26日(金)

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