第935回
中国で「持ち家を買う」ということ

持ち家か賃貸か。
この問題は日本では一応の結論が出ており、
結局は持ち家でも賃貸でも損得はない、
ということになっています。

一方の中国では持ち家派が圧倒的に多いです。
持ち家派の主張は「賃貸では家賃を払い続けても
その家はいつまで経っても自分のものにはならないが、
持ち家をローンで買って毎月家賃並みの金額を返済し続ければ、
最後には持ち家という資産が残る」というものです。

中国ではここ数年インフレが進み、
不動産価格も上がり続けていたため、
日本の高度経済成長期同様、ローンで持ち家を買って、
どんどん目減りする借金の返済と
どんどん上がる持ち家の資産価値をダブルでエンジョイする、
というもくろみもあったのかもしれません。

しかし、ここに来て中国政府のインフレ抑制のための
金融引き締め政策が強烈に効き始め、
中国の不動産市場は今までの上昇から一転して
下落する傾向が出てきました。
不動産価格に下落の傾向が出てくると、
持ち家を買おうと考えていた人も
「もうちょっと待てばもっと安くなるかもしれない」と考え、
買い控えるようになりますので
不動産が売れなくなり不動産価格が更に下がる、
という負のスパイラルに入りつつあります。

不動産価格が下落し、インフレも沈静化すれば、
中国でもローンで持ち家を買う人は減り、
賃貸派が少しは増えるのかもしれません。

私は以前から中国の「持ち家」という概念に
大きな疑問を持っていました。

日本では「持ち家を買う」とは
土地と建物の永久的な所有権を買うことを意味しますが、
中国では土地は全て国家の持ち物ですので、
中国で「持ち家を買う」とは建物の永久的な所有権と
土地の70年間の借地権を買うことを意味します。
中国の「持ち家」は言ってみれば
「長期借地権付き建物」なのです。

70年も借地権があれば所有しているのと同じことだ、
と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
では50年の借地権ならどうなのか、
当社の倉庫のように20年の借地権ならどうなのか、
と突き詰めていくと、
中国では「持ち家」と「賃貸」の概念の境界線が
非常にあいまいであることが分かります。

中国の不動産に投資することを考えておられる方は、
その「長期借地権付き建物」の本当の価値について
よくよく考えた上で投資されることをおススメします。


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2008年10月10日(金)

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