第941回
「相互誤解」を促進する日中のマスメディア

今後の日中関係のキーワードはまずは「相互理解」、
そして次に「共通の利益」だと思うのですが、
「共通の利益」を追求するどころか、
第一段階の「相互理解」でさえも
圧倒的に足りないのが現状であると思います。

京論壇に参加した東京大学と北京大学の学生たちのように、
お互いに相手を尊重しながら
冷静且つ率直に話し合う機会があれば、
両国国民の相手国に対する理解も大いに進むと思うのですが、
残念ながら現状、両国のほとんどの人たちには
そうした機会はありません。

本来であればマスメディアが、
お互いに直接話し合う機会のない両国民の
「相互理解」を促進する役割を担うべきであると思うのですが、
両国のマスメディアは時として「相互理解」を促すどころか、
「相互誤解」を促進してしまっているような
ケースも見受けられます。

中国のマスメディアはそもそも
中国共産党のプロパガンダの手段でしかありませんので、
「日本を共通の敵として中国国内をまとめ上げよう」
という政策がとられていた時代は、中国人扮する日本軍人が
「ミシミシ(飯飯)」、「バカヤロ」などと言いながら、
悪逆無道の限りを尽くすような戦争映画が
頻繁に流されていました。

あんなのをたくさん見せられたら、
日本が嫌いになるのはある意味当たり前です。

日本は中国と違って報道の自由が認められていますので、
日本のマスメディアはありのままの中国の事実を
伝えることができるのですが、
それでも日本のマスメディアの中国報道を見ていると、
これでは日本の人たちが中国を誤解してしまうのではないか、
と思うことが良くあります。

これは「ニュース性の罠」とでも言うべきものですが、
日本のマスメディアが伝える中国のニュースは
視聴者や読者が見たいニュース性のあるものに限られ、
事実であることには違いはないのですが、
そのニュース性のあるニュースだけを
毎日のように流しますので、
受け手がそれを中国の全てであると
思い込んでしまうことにあります。

同じ「日中関係」にまつわる出来事でも、
「反日デモのデモ隊が日本大使館に投石して
窓ガラスを割りました」というのはニュースになりますが、
「北京日本人会が盧溝橋の日中友好森林公園で
中国側の代表と一緒に植樹をしました」
なんていうことはニュースにはならないのです。

やはり、相手国の本当の姿を知るためには、
自分でその国に行って、
自分でその国の人と腹を割って話し合うしか
方法がないのかもしれません。


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2008年10月24日(金)

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