第940回
「相互理解」と「共通の利益」

私が京論壇2008のビジネス分科会で
レクチャーをさせて頂いたのは
「日中間の理想のビジネス」というテーマです。

過去、京論壇でレクチャーをしているのは、
大学の教授や名だたる大企業の経営者が多く、
私のような「社員60人の中小企業のおやじ」に
レクチャーをさせるのはかなりの冒険だったと思うのですが、
そうした彼らの期待を裏切らないように、
中小企業のおやじならではの、
実体験に基づいたお話をたくさんさせて頂きました。

このレクチャーで私はまず、
私とビジネスパートナーである劉さんの
パートナーシップについてお話をしました。

日本人の私には日本人の長所である
「サービス精神」、「完璧主義」、「生真面目さ」
が備わっています。
一方、中国人の劉さんには中国人の長所である
「合理主義」や「柔軟性」が備わっています。
この2人がお互いの良いところを生かし、
足りないところを補いながら当社を経営しています。

この両者の長所は、時として矛盾することもあるのですが、
今まで6年半一緒にやってきて
意見が対立したことはほとんどありません。
それはなぜか。

1つ目の理由は、
2人とも相手の国の人たちの考え方を
良く理解しているからです。
この「相互理解」があれば、
お互い話していてもどちらかに偏ることなく、
客観的な立場で話ができます。

2つ目の理由は、
「会社の利益になるかどうか」という目的で、
お互いの最終的な利害が一致しているからです。
この「共通の利益」があれば、
お互い向かい合って、どちらが「正しい」とか
「間違っている」と対立しあうのではなく、
同じ方向を向いて「最善の選択肢は何か」
ということを考えることができるのです。

この「相互理解」と「共通の利益」はビジネスの世界に限らず、
今後、理想的な日中関係を築くための
キーワードになるのではないかと私は思っています。

育ってきた環境が全く違う両国の人たちが
全く同じ考え方をする、などということはありえません。
「相互理解」でお互いの考え方の違いをしっかりと認識した上で、
では、両国の強みを生かし、弱みを補い合いながら
「共通の利益」を追求してwin-winの関係を築くには
どうしたら良いのか。
こうした方向で考えていくことが、
最終的には両国の国民を
最も幸せにするのではないかと思います。

当社という小さな世界でうまく回っている「日中関係」が、
もっと大きな世界に広がっていくことを心から祈っています。


←前回記事へ

2008年10月22日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ