第958回
地下鉄の車内で「商売」をする人たち

北京オリンピックのおかげで、
北京の地下鉄は7路線に増え随分便利になりました。
特に、地下鉄10号線は亮馬橋駅が
当社のオフィスから歩いて5分ほどのところにあり、
渋滞が激しい街の中心部に行く時などは
非常に助かっています。

地下鉄の利用者が増えるに従って、
人が大量に集まることに目を付けた
商魂たくましい人たちが商売をしようとするのですが、
もちろん中国でも駅の構内で勝手に商売をしていたら、
駅の職員に捕まってしまいます。

そこで彼らが盲点として目を付けたのが地下鉄の車内です。
地下鉄の駅にはたくさんの職員がいますが、
車内には運転手と車掌しかいませんので、
わざわざ車掌に通報する乗客でもいない限り、
捕まってしまう可能性は非常に低いのです。

私は先日、地下鉄10号線で
亮馬橋駅から国貿駅まで行ったのですが、
わずか5駅の間に3組の「商売」の人が
車内を回ってきました。

1人目は大きな声で
「晨報1塊!晨報1塊!」
(ちぇんばおいーくわい!、北京晨報1元(14.5円)!)
と言いながら回ってくる新聞売り。
地下鉄に乗っている間乗客はヒマですので
さぞやたくさん売れるのではないかと思いきや、
中国では日本と違って電車に乗った時に
新聞や本を読む習慣がないせいか、
売れ行きは今一つでした。

2組目は2人組の物乞い。
両足のない物乞いがおしりと両腕で歩いて先導を務め、
後ろから相棒がスピーカー付きのマイクで
悲しい歌を歌いながらおカネを集めて回る、
というかなり濃い演出の物乞いです。
相棒が持っている袋におカネが入ると、
歌を中断して「しえしえ〜」(謝謝)と言うのですが、
私が乗っている車両だけでも7-8回
「しえしえ〜」が聞こえてきましたので、
これは結構儲かっているようです。

そして3人目は耳の不自由な少女。
袖を引っ張られたので振り向くと
高校生ぐらいの少女が立っていて、
パウチされたカードと
木で作られた人形のキーホルダーを見せられました。
カードには
「私は耳が不自由なので話すことができません。
でも、生きていくために一生懸命
この人形を作って生計を立てています。
私を助けると思って買ってください」
というような意味のことが書いてあります。
人形のキーホルダーはいらないのですが、
カードを読んだら最後、
助けてあげざるを得ないような
気持ちにさせられてしまいます。

新聞売りも物乞いも耳の不自由な少女も、
以前は路上でよく見かけたものですが、
地下鉄の車内は人が多いし、暖かいし、
良い「商売」の場所を見つけたものです。

ただ、それだけの知恵を別の「商売」で使ったら、
みなさんもっとたくさんのおカネを
稼ぐことができるのではないかとも思うのですが...。


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2008年12月3日(水)

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