第963回
日本企業で働きたいですか?

中国に進出した日本企業の成功は、
優秀な中国人人材を確保できるかどうかに
かかっていると言っても過言ではありません。

最近はどこの日系企業でも、
中国語でろくに商談もできないくせに、
現地社員の数倍の給料をもらって
優雅な暮らしをしている日本人駐在員を
養っていくほどの余裕はなくなってきていますので、
日本人駐在員に代わる中国人管理職人材の確保は急務です。

毎年赤字を垂れ流し続けている
ある日系企業の日本人総経理(社長)が、
中国人幹部社員を集めて
黒字化の方策を考える社内会議を開いたところ、
全員から「総経理が日本に帰ることが、
黒字化の最も効果的な方策です」と言われてしまった、
という笑うに笑えない話を聞いたこともあります。

かく言う私も丸紅北京支店で働いていた時には、
直接人件費だけで20万米ドル以上かかっていると
言われていました。
赤字の日系企業の中にも、
日本人駐在員が日本に帰るだけで
黒字化できるような会社が
結構たくさんあるのではないでしょうか。

さて、では肝心の中国人人材は
日系企業で働きたいと思ってくれているのでしょうか。

サーチナが今年10月に
中国の一般消費者を対象に行った調査によれば、
「機会があれば日本企業で働いてみたいか?」
という質問に対し、
「非常に働きたい」、「働きたい」と
回答した人の割合は合わせて48%でした。
逆に「働きたくない」、「全く働きたくない」は
28%に止まっており、
最近の日中関係の良好さを反映してか、
就職先としての日本企業の人気はまずまずのようです。

興味深いのは回答者のコメントです。
「働きたい」と回答した上海の20代の女性は
「日本企業は管理が行き届いており、
企業制度としての完成度が高い」とコメントし、
「働きたくない」と回答した上海の40代の男性は
「制度が硬直しており、大胆さに欠ける」としています。

両者とも「日本企業は制度がカッチリしている」
という認識は共通なのですが、
それを「安心」ととらえるか、
「窮屈」ととらえるかで正反対の回答になっているようです。

中国で優秀な人材を確保しようとする日本企業は、
まずは「日本企業」というイメージ自体が
「革新的」な人材より「保守的」な人材を惹きつける、
ということを認識する必要があるように思います。


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2008年12月15日(月)

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