第987回
「人肉捜索」によるプライバシーの侵害

今後、汚職役人を摘発したり役人の不正を抑止する
重要な役割を担っていくと思われる「人肉捜索」ですが、
インターポールも顔負けと言われるその強大な調査力は、
時として個人のプライバシーを侵害し、
人の人生を狂わせてしまう可能性もはらんでいます。

先日、北京市の裁判所で
「人肉捜索」に関わるトラブルについて、
初めての判決がでました。

2007年12月、ある女性が自殺しましたが、
その女性は自殺前に自殺の動機などを綴った
自らのブログの暗証番号を
インターネット上の友人に伝えていました。
女性の自殺後、
暗証番号を使って彼女のブログを見た友人は
女性のブログをネット上で公開、
その内容から女性の自殺の原因は
夫の浮気であるとの書き込みがネット上に広まりました。

その書き込みを見た女性の大学時代の友人が
自らのブログで夫の個人情報の提供を呼びかけたところ、
夫の実名や写真がネット上に拡散、
ネット上には夫を中傷する書き込みが増え、
夫の自宅に押しかけて嫌がらせをする人まで現れました。

この事態に怒った夫はプライバシーが侵害されたとして、
ブログで夫の個人情報提供を呼びかけた妻の友人と、
そのブログの内容を黙認したプロバイダーを提訴、
裁判所は夫の名誉が傷つけられたと認定し、
妻の友人に5000元(65000円)、
プロバイダーに3000元(40000円)の
慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡しました。

結局、女性の自殺の原因が
夫の浮気だったかどうかは闇の中ですが、
この事件によって「人肉捜索」が
一般民間人の個人情報も簡単に調べられることと、
個人情報を暴かれた人は正義の名の下に
何をされるかわからない危険に晒されることが
わかりました。

汚職役人の特定や役人の不正の抑止には
絶大なる効果を発揮しそうな「人肉捜索」ですが、
今後、自分の知らないところで個人情報が拡散し、
知らない人から嫌がらせを受けるというような事態が
発生する可能性も出てきました。

インターポールも顔負けという
強烈な力を持っているからこそ、
「人肉捜索」を使う人は
それが両刃の剣であることを良く自覚した上で、
使い方には細心の注意を払ってほしいものだと思います。


←前回記事へ

2009年2月6日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ