第986回
役人の不正を抑止する「人肉捜索」

昨年は頼りにならない警察に代わって、
「網民」が協力して不法行為を行った個人を特定し、
ネット上で吊し上げる
「人肉捜索(れんろうそうそう)」も流行し、
米紙ロサンゼルス・タイムスをして
「その調査力はインターポール(国際刑事警察機構)顔負け」
と言わしめました。

昨年10月、広東省深セン市のレストランで、
ある男が11歳の少女を男子トイレに連れ込もうとしました。
何とか逃げた少女の両親が
その男を見つけて文句を言ったところ、
その男は謝るどころか逆ギレして
少女の両親に暴言を吐き続けました。

この一部始終を映した映像が何者かによってネット上に流失、
「網民」たちの「人肉捜索」により、
あっと言う間にその男が
交通部から派遣されている中央政府の高官、
深セン市海事局の林嘉祥副局長であることが判明しました。

北京の交通部はこの事実を重く見て極めて迅速に対応、
事件の2日後には林副局長を停職処分にしました。

また、昨年末には
江蘇省南京市江寧区の不動産管理局長が
「コストを無視した不動産の値下げはけしからん」
と発言して消費者の反感を買いましたが、
その後「人肉捜索」で
1箱150元(2000円)もするタバコを吸っているなどの
同局長の金満家ぶりが次々と暴かれ、
最終的に同局長は辞任に追い込まれました。

今までの中国ではこうしたことがあっても、
その事実は地元政府によって握りつぶされ、
被害者や一般庶民は
泣き寝入りをするしかありませんでした。
しかし、「人肉捜索」で個人が特定され、
たくさんの「網民」が騒ぎ始めれば、
中央政府も無視できなくなります。

一党独裁体制であるのを良いことに、
政府の役人による汚職や横暴が横行する中国において、
インターネットによる「人肉捜索」は、
今後、役人の不正を白日の下に晒し出し、
不正を監視し抑止する重要な役割を
担っていくのではないかと思います。


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2009年2月4日(水)

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