第996回
「日本語は勉強しやすいですか?」

中国人の人たちと話をしていると、
よくされるのが
「日本語は勉強しやすいですか?」という質問です。

この質問に対して私はいつも
「最初はとても簡単ですが、
勉強するに従ってどんどん難しくなります」
と答えています。

日本語という言語は
発音がある程度いい加減でも通じますし、
ひらがなを覚えれば話す言葉は
とりあえず全て文字にすることができます。
このため、日本語を話したり書いたりして
自分の意思を相手に伝えることができるぐらいの
レベルに到達するのは難しいことではありません。

しかし、日本語の勉強を進めていくと
様々な例外が出てきて、
同じ内容でもケースバイケースで
適した言い方が違ったりします。
私たち日本人は子供の頃から
様々なケースを経験していますので、
その場面に適した言い方を
自動的に選択して話していますが、
そうした蓄積のない外国人の人が、
ネイティブの日本人と同じレベルの
日本語を話せるようになることは
ほぼ不可能なのではないかと思います。

一方、日本人が中国語を勉強し始めると、
いきなりぶつかるのが発音の壁です。
まずだいたいが「日本人(ri ben ren)」と
中国語で発音しようとすると、
日本語にはない「r」の発音が2回も出てきて、
自分がどこの国の人間であるかさえ
正しく発音できない、という事態に陥ります。

更に悩ましいのが四声です。
同じ「まー」という発音でも、
一声なら媽(お母さん)、二声なら麻(しびれる)、
三声なら馬(うま)、四声なら罵(ののしる)
という漢字が聞いている人の頭に浮かんでしまいます。
このため、四声を正しく発音しないと、
お母さんが馬になってしまったり、
しびれたつもりがののしってしまったり、
という大きな誤解が生じる可能性もあります。

しかし、この日本語にない発音と
四声の難関を何とかクリアすれば、
中国語は日本語よりも言い方の例外が少ないですので、
習得した単語の数が増えるに従って、
どんどんいろいろなことを話せるようになります。

最初は簡単ですがどんどん難しくなる日本語と、
最初は難しいですがどんどん簡単になる中国語。
こうした両言語の特徴を良く理解して、
日中両国のより多くの人たちが途中で挫折することなく、
お互いの国の言語の習得に励んでくれたら良いな、
と思います。


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2009年2月27日(金)

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