第1002回
増える高齢者人口、減る労働力人口

15-64歳の労働力人口が増加し続けている中国ですが、
こうした状況は長くは続きません。
中国政府直属のシンクタンク・社会科学院の発表によれば、
中国の労働力人口は2015年以降減少に転じるとのことです。

理由は2つ。
当たり前の話ではありますが、
1つは15歳になる人がどんどん減るから。
もう1つは65歳になる人がどんどん増えるからです。

この話を理解するには、中華人民共和国建国後
3回あったベビーブームについて知る必要があります。

クリックで大きい画像をご覧になれます。

まず、第1次ベビーブームは1950年代。
1950年に制定された婚姻法で、
それまで身分的に結婚ができなかった階層も含んだ
結婚ブームが起こり、出生率が大幅に上がりました。

第2次ベビーブームは1960年代。
毛主席が労働力を資本として国を発展させる
「人口資本説」を実現させるためと、
アメリカとの戦争を人海戦術で戦うために
子供の多産を奨励、ベビーブームが起きました。

そして、第3次ベビーブームは1980年代。
1979年に既に一人っ子政策が開始されていましたが、
第2次ベビーブームの時に生まれた
大量の人たちが親になる年齢となり、
各家庭の子供は1人でも、
親の母数が大きいため生まれる子供の数が増加しました。

2015年に15歳を迎えるのは2000年生まれの子供たち。
第3次ベビーブームも終わり、
一人っ子政策で子供の数がどんどん減っている世代です。

そして、2015年に65歳を迎えるのは
1950年生まれの人たち。
第一次ベビーブームで生まれた、
「中国版団塊の世代」の人たちが
大量に現役から退き始めます。

こうした理由から、中国では2015年以降、
労働力人口は減少に転じてしまうのです。

中国では今後、労働力人口が減っていくのに対し、
65歳以上の高齢者人口はどんどん増えていきます。
現在、中国の高齢者人口は全人口の8.5%と、
日本の22%と比べるとかなり低い水準に収まっています。

しかし、今後は第1次ベビーブーマーに続いて、
第2次ベビーブーマーの大量退職も始まります。
その一方で、一人っ子第1世代の人たちが、
父母2人で一人っ子第2世代の子供1人を生むことにより、
更に少子化が進みますので、
高齢者比率は2020年には11%、2040年には22%と
急速に高まっていくことが予想されています。

今は労働力人口の増加に対応するために、
高い経済成長率を保たなければならない中国ですが、
近い将来、労働力世代の雇用の確保よりも、
高齢者世代の生活保障の方が
大きな問題になってくることは確実です。

2040年に今の日本と同じ高齢化社会を迎える中国。

中国政府は「高齢化社会先進国・日本」が
国民の高齢化にどのように対処していくのか、
「明日は我が身」ということで、
かなり注意深く見守っているのではないでしょうか。


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2009年3月13日(金)

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