第1003回
本格的な高齢化社会の到来に備える中国

日本から約30年遅れで本格的な高齢化社会を迎える中国。

それも一人っ子政策という
非常に強烈な人口抑制政策を継続していますので、
15-64歳の労働力人口は減少を続け、
高齢者世代の生活を支える労働力世代の負担は
今後急速に高まっていくことが予想されます。

こうしたことには中国政府も当然気付いており、
来るべき高齢化社会に向けて
着々と準備を進めているようです。

高齢化社会ではより少ない労働力人口で
より多くの高齢者世代を養っていく必要があります。
となると、労働力世代1人1人が
今よりもっとたくさんのおカネを稼がなければなりませんので、
国全体の産業を高付加価値化する必要があります。
今の中国は低付加価値の製品を
大量に輸出して海外の市場を席巻し、
「世界の工場」などと呼ばれて
喜んでいる場合ではないのです。

こうしたこともあり中国は
既に国内の産業を高付加価値化するべく、
税制や許認可などの優遇で
高付加価値産業の奨励をしています。
そして、第1次産業の農民は第2次産業の工員に、
第2次産業の工員は第3次産業の服務員へと
シフトさせることにより国民1人当たりのGDPを上げ、
より少ない労働力世代でどんどん増える高齢者世代を
養っていけるような経済構造を作ろうとしているのです。

中国は2007年の時点でドイツを抜き、
世界第3位の経済大国にのし上がりました。
しかし、いつもならここぞとばかりに
国威発揚のネタにしそうな中国政府が
「GDPの総額で世界第3位になったことは
大して重要なことではない。
重要なのは世界で100位にも達していない
国民1人当たりのGDPをいかに上げるかだ」
というような意外と冷めた対応をしています。
この冷めた対応の背景には、
高齢化社会を控えて国民1人当たりのGDPの引き上げが
急務であることもあるように思います。

世界的な金融危機による景気の減速で、
失業者の雇用問題に悩む今の中国ですが、
中長期的には
「高齢化社会を控えていかに少ない人数で
多くの付加価値を生み出せる経済構造にするか」
の方がずっと重要な課題なのです。


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2009年3月16日(月)

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