第1031回
いくらでもおカネを使うことができる街・北京

「北京はカネを使うところがないから、
貯まっちゃって貯まっちゃって仕方がないよ」

今から13年前、
1996年に私が北京に来たばかりのころ、
日本企業の北京駐在員たちは
みんな冗談まじりにこんなことを言っていました。

実際、当時の北京は物資は既に豊富だったものの、
高級品や高級サービスはまだほとんどなく、
普通に生活していればもらっている給料を
半分使うのも難しいぐらいでした。

時々、東京の至れり尽くせりな消費生活が
恋しくなることもありましたが、
北京におカネを使うところがなかったおかげで、
2000万円の起業資金を貯めることができたわけですから、
私は当時の北京の状況に感謝しなければいけません。

そして今。
北京はおカネを使おうと思えば、
いくらでも使える街へと変貌を遂げました。

日本料理で言えば、
毎日築地から空輸されてくるトロを使ったお寿司、
カニの箱の中に隠されて密輸されてきた
神戸牛を使ったステーキなどなど。
中には一番安いメニューが
3000元(42000円)のランチコース、
などというお店もあり、
世界的な金融危機の影響で景気が減速しても、
カネはあるところにはある、
ということを再認識させられます。

「そんな状況では北京に住む庶民の暮らしは、
どんどん苦しくなっているのではないか」
と思われるかもしれませんが、
そこはうまくできていて、
市場で肉や野菜を買って家で料理をして食べていれば、
一家3人で1日30元(420円)、
月1000元(14000円)もあれば十分ですので、
住む家さえ持っていれば世帯収入が
月2000-3000元(28000-42000円)ぐらいの家族でも
食うに困ることはありません。

3人家族の3か月分の食費を、
ほんの1時間のランチで使えてしまう街・北京。

今の北京の街は、倹しく暮らしていれば
生活費を低く抑えることができますが、
贅沢をしようと思えば、
いくらでもおカネを使うことができるのです。


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2009年5月20日(水)

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