第1032回
中国政府が「内政」問題で強硬姿勢を貫くワケ

チベット問題、ウイグル問題に台湾問題。
中国政府は様々な「内政」問題を抱えています。

こうした問題に中国政府が常に強硬な態度で臨む、
というか、臨まざるを得ないのは、
少しでも譲歩をすれば
総人口の92%を占める大陸に住む漢族が
中国共産党の中国支配に
「ノー」を付き付ける可能性があるからだ、
と私は思っています。

チベット族は500万人、ウイグル族は700万人、
台湾人は2300万人。
まかり間違って合計3500万人全てを敵に回したとしても、
12億人を超える大陸に住む漢族を敵に回すよりは
ずっとましです。

こうした観点から、
中国政府のこれら「内政」問題に関しての発表は、
問題の当事者に向けて行われているのではなく、
全て大陸に住む漢族に向けて
「ほら、中国共産党はみなさんのために、
こんなに一生懸命がんばっているんですよ」
というアピールをするために行われているのだ、
と思って私はいつも聞いています。

このため、中国政府にとっては
これらの「内政」問題が解決するに越したことはないですが、
解決しなくても強硬姿勢を取り続けることによって、
大陸に住む漢族から
「中国共産党は良くやっている」という評価をもらえれば
とりあえずは良いわけです。

この仮説が合っているとすれば、
もし、中国が民主化されたとしても
これらの「内政」問題は解決の方向には進みません。
むしろ、中国が民主化すれば、その政権は
そうした独立派に対して融和政策を取るどころか、
中国共産党よりも更に強硬な政策を
取るのではないかと思います。
何しろ、選挙民の92%という
圧倒的多数が強硬策を支持するわけですから...。

これはもちろん民主主義国家である
日本でも同じことが言えます。

よく中国の人たちとチベット問題について話していると
「じゃあ、あなたたち大和民族はアイヌ民族が
「北海道は元々我々の土地だったので返して欲しい」
と言い出したら返すのか?」という話になりますが、
これについては日本国民のほぼ100%が
「返さない」と答えるのではないでしょうか。

北海道どころか、先日、
麻生首相が北方領土問題の解決方法として
「北方四島の面積を半分にして、
択捉島の75%をロシア領とすることで解決する」
という案を出しただけで、
売国奴呼ばわりする人がたくさん出たわけですから、
本当は自民党も国民の支持を得て政権を維持したかったら、
中国政府のように問題の解決よりも
強硬姿勢を貫くことを優先すべきなのです。

一党独裁国家であっても、民主主義国家であっても、
その国の政府が国民から多くの支持を得たかったら、
マイノリティーや外国が絡む問題に関しては、
その問題が解決するしないは二の次であり、
何しろ強硬姿勢を貫いているところを、
マジョリティーの人たちに見てもらうことが
必要となるのではないでしょうか。


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2009年5月22日(金)

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