第1035回
「♪目立た〜ぬように♪」

大阪では「もうかりまっか?」と挨拶されたら、
「ぼちぼちでんなぁ」と答えることになっているようですが、
これは中国でも同じです。

「最近生意怎麼様?(ついじんしょんいーつぇまやん、
最近ご商売の方はいかがですか)」と訊かれたら、
どんなに儲かっていてもみんな
「還行(はいしん、まあまあです)」とか、
「還可以(はいかーいー、まあまあです)」と答えます。
「非常好(ふぇいちゃんはお、すごく好調です)」
と答える人はほとんどいません。

これは大阪の「ぼちぼちでんなぁ」同様ほとんど決まり文句で、
ちょっとした謙遜のニュアンスも入っているのですが、
一方でこちらの商売の状況を悟られないための
したたかな自己防衛手段でもあります。

中国では大儲けしていることが世間に知れると、
ロクなことが起きません。
カネの臭いを敏感に嗅ぎつけたカネの亡者たちが、
次から次へと近寄ってきてしまうのです。

ほとんど面識がないのに
老朋友(らおぽんよう、昔からの友達)のような顔をして、
投資を勧める亡者、カネを借りようとする亡者、
モノを売りつけようとする亡者などなど。

カネの亡者は時々間違えて、
毎月の資金繰りでヒーヒー言っている
当社のような零細企業にまでカネの普請に来たりします。
亡者の中にはかなり鼻の悪い亡者もいるようです。

こうした民間人のカネの亡者は、
近寄ってきてもお断りすれば済む話なので
それほど実害はないのですが、
やっかいなのは役人のカネの亡者です。

カネの臭いを嗅ぎつけた悪徳役人は、
自らが持つ権限を現金化するべく、
狙いを付けた会社にいろいろと難癖をつけて巨額の罰金を科し、
企業側が「これで何とか丸く収めて頂けないでしょうか」と
カネを持って謝りに来るのを待ちます。
「10万元(145万円)の罰金が
2万元(29万円)のワイロで済めば安いもんだろう!」
ということです。

「何しろ極力目立たないの術」は
大変地味ではありますが、
中国ビジネスの奥義の1つです。

飲食業などでは目立たないと
カネの亡者が近寄ってこない代わりに、
お客さんも寄ってこない、というジレンマはあります。
しかし、中国ビジネスの世界では
「外から見るといかにも儲かっていなさそうな零細企業だが、
実際は結構大きな利益を上げている」
などという目立たない会社が最高なのです。

河島英五の「時代おくれ」という歌に
「♪目立た〜ぬように、はしゃが〜ぬように♪」
という歌詞がありますが、当社もそんな
「♪時代おくれの〜会社になり〜たい〜♪」です。


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2009年5月29日(金)

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