第1062回
中国人旅行者は日本の地方を救うのか?

今月から中国人の日本個人旅行が解禁となりました。

今まで、中国の人たちは
訪日後の不法滞在防止という理由で、
添乗員付きの団体旅行でしか
日本に行くことができなかったのですが、
今回、北京、上海、広州の3都市の
年収25万元(350万円)以上の富裕層に限り、
添乗員なしの個人旅行でもビザが下りることになりました。

年収25万元ということは月収2万元(28万円)以上と
中国ではかなりの高給取りですから、
該当するのは外資系企業の管理職や
会社オーナーに限られますが、
それでも解禁初日から3都市で142人と、
予想以上の人がビザの申請をしたそうです。

これでにわかに盛り上がっているのが、
日本の地方自治体です。
ただでさえ東京への一極集中によって寂れつつあるところに、
金融危機による不景気が追い討ちをかけ
青息吐息になっている地方が、
中国人観光客の誘致に一発逆転の望みを託して、
中国の旅行会社に対して各地方の観光資源を
積極的にアピールしているようです。

今年初め、中国で大ヒットした北海道を舞台とした映画
「非誠勿擾(ふぇいちぉんうーらお)」のおかげで、
中国の人たちの間で北海道旅行が大ブームとなったことも、
彼らに柳の下で2匹目のどじょうを狙わせる
大きな動機となっているようです。

しかし、私は日本に旅行に行く中国人が増えても、
それで青息吐息の地方が息を吹き返すとは思えません。
なぜなら、多くの中国の人たちが日本に行く
最大の目的はお買い物だからです。

外国から日本に行った旅行者が買い物に使うお金は
平均6万円とのことなのですが、
中国からの旅行者に限れば11万6000円と、
平均の2倍近くのお金を使ってくれるのだそうです。
しかし、そのお目当ては地方の民芸品などではなく、
電化製品、洋服、バッグ、日用雑貨などなど、
全て東京に行けば買えてしまうものばかりです。

中国に住んでいると良く分かるのですが、
今の日本は本当に買い物天国です。
中国より品質やデザインの良いモノが、
ものによっては中国よりずっと安く買えるのです。
私のビジネスパートナーで二児の母である劉さんも、
出張で日本に行くと、かわいくて安い
日本の子供服を買いまくります。

日本政府は昨年100万人を突破した中国人旅行者を、
2020年には6倍の600万人にしたいとしています。
600万人が平均11万6000円の買い物をしてくれれば、
その経済効果は7000億円と
日本経済に大きな影響を与えることになると思われます。

しかし、地方自治体の大きな期待とはうらはらに
その7000億円のほとんどは東京に落ち、
中国人旅行者の増加が
日本の地方を救うことはないのではないか、
と私は思います。


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2009年7月31日(金)

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