第1080回
中国は先進国?それとも発展途上国?

世界の中でますますその存在感を増す中国。

今年中には日本を抜いて
世界第2位の経済大国に躍り出ることが
確実視されていますし、
7月にイタリアで開催されたラクイラ・サミットでは、
ウイグル暴動対応のために
胡錦濤国家主席が急遽帰国してしまったことで、
地球温暖化対策などの話し合いが
全く進展しないのではないかということが懸念されました。

中国は昨年、北京オリンピックを無事に乗り切り、
来年には上海で万博を開くことからも、
世界が中国をそうしたビッグイベントを
開催する能力がある先進国である、
と見なし始めていることがわかります。

一方で中国の1人当たりの国内総生産(GDP)は
昨年やっと3000ドルを超えたばかりと、
日本の1/10以下でしかありません。
農村に行けば水道やガスが
普及していない地域がたくさんあり、
どう見ても発展途上国としか言えない一面も持っています。

中国は13億を超える巨大な人口を抱えるがゆえに、
国としてのマクロの視点からは
世界第2位の経済大国となることが確実で、
先進国と呼ばれる資格が十分にあるように見えますが、
国民1人1人のミクロの視点から見ると、
1人当たりのGDPが
3000ドルを超えたばかりの発展途上国である、
という非常にユニークなポジションにあるのです。

中国政府は自国が置かれた
そうしたユニークなポジションについて
十分理解しているようで、
時と場合によって「先進国としての中国」と
「発展途上国としての中国」を
うまく使い分けているように見えます。

例えば、中国は「先進国」として
国際通貨基金(IMF)での発言権の拡大を主張しています。
世界第2位の経済大国になろうとしている中国の議決権が、
世界第20位でGDPの規模が
中国の1/8しかないベルギーより小さいというのは、
どう考えてもおかしいだろう、というのがその論拠です。

一方で地球温暖化問題になると
中国は「発展途上国」として
「まずは今までさんざん二酸化炭素を排出することによって
発展してきた先進国が排出量の大幅な削減をするべきだろう」
という主張をしています。
中国は既に世界最大の
二酸化炭素排出国になっているにも関わらず、です。

中国はそのユニークなポジションを利用して、
「先進国の権利を要求し、
発展途上国の責任を果たす」のではなく、
どちらなのか立場をはっきりし、
権利を要求するからには応分の責任を果たす覚悟を
してほしいものだと思います。


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2009年9月11日(金)

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