第1092回
中国共産党の「党内民主主義」

最近、中国で「党内民主主義」という言葉を
良く聞くようになりました。

これは中国共産党内部の不透明な人事に対する
民衆の不満を和らげることを目的に、
まずは党内から民主的で透明性のある方法で
人事を決定した方が良いのではないか、と
胡錦濤総書記が主張しているためです。

このため、従来のパターンでいけば、
3年後の2012年に任期が切れる胡錦濤総書記の
次の総書記を確定する意味で、先月開催された
中国共産党第17期中央委員会第4回総会(4中総会)で、
現在、後継者の最有力候補と言われている
習近平(しーじんぴん)国家副主席が
党中央軍事委員会副主席に任命されるはずだったのですが
これが見送られ、次期総書記人事は
再び流動的になってきました。

ただ元々、胡錦濤総書記自身も
民主的な方法で総書記に選ばれたのではなく、
ケ小平氏の鶴の一声によって、
江沢民氏の次の総書記に指名されました。

就任当初、胡錦濤総書記は自分の後継者として、
自分と同じ共産主義青年団(共青団)出身の
若手の出世頭だった
李克強(りかーちゃん、現副首相)氏を推していましたが、
2007年に行われた第17回党大会の指導部人事で
江沢民派からの圧力を受け、
彼らが推す習近平氏を李克強氏より上の、
若手ナンバーワンの地位に引き上げることを
余儀なくされました。

こうした経緯があるため、うがった見方をすれば、
江沢民派が推す習近平氏が
このまま自分の次の総書記に確定してしまうことを
快く思っていない胡錦濤総書記が、
民衆の不満を和らげる「党内民主主義」という錦の御旗の下、
あわよくば総書記人事をひっくり返してやろう、
と画策していると見ることもできます。

しかし、胡錦濤総書記が掲げる「党内民主主義」は、
今後、中国共産党が生き残っていくためには
避けては通れない道です。
はっきり言って今の中国共産党には、
党内で派閥争いをしている余裕はないはずです。
常に民衆の方を向いて、民衆が望む政治をしなければ、
いつ反政府運動が起こってもおかしくありません。
それは年間1200万件以上の陳情と、
年間9万件以上の暴動という数字が物語っています。

胡錦濤総書記の頭の中には、
党内の派閥争いに明け暮れ、
国民不在の政治を行った結果、
国民からそっぽを向かれて下野した、
隣国の元執政党を他山の石としなければいけない、
という意識があるのも想像に難くありません。

まずは全国に7600万人いる党員の中で
民主化、透明化を進め、
最終的にはその党員が
民衆から民主的な方法で選ばれるようにすることしか、
中国共産党が一党独裁体制を
維持していく方法はないのではないか、と私は思います。


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2009年10月9日(金)

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