第1093回
新聞はタダで配られる時代に

「なんなんだ、この圧倒的なシェアは...」

私は毎朝、散歩がてら20分かけて歩いて出勤しています。
その道すがらに地下鉄10号線の亮馬橋駅の出口があるのですが、
その出口から出てくる人が持っている新聞が
全て「信報(しんばお)」という新聞だったのです。

中国は新聞大国です。
日本のような宅配システムではなく、
街角の新聞スタンドで売られているにも関わらず、
毎日1億部以上という世界第1位の新聞販売部数を誇ります。
新聞の種類も日本のように寡占状態ではなく、
北京だけでも「北京青年報」、「北京晨報」、「北京晩報」、
「環球時報」、「新京報」、「参考消息」などなど
たくさんの新聞が発行されています。

そんな競争の激しい北京の新聞業界の中で、
なぜ地下鉄の出口から出てくる人が持っている新聞が
全て「信報」なのか。
不思議に思って当社のスタッフに訊いてみたところ、
「柳田さん、「信報」は地下鉄の駅の構内で
タダで配っているんですよ」とのことでした。

中国の新聞は1部5角(7円)とか1元(14円)と安く、
それが中国の新聞販売部数を
世界一にまで押し上げる原因の1つにもなっています。
しかし、やはりそれでも
「免費(めんふぇい、無料)」の魅力は強烈で、
地下鉄の駅でタダでもらえるのならば、
わざわざ新聞スタンドで他の新聞を
おカネを出してまで買う必要はない、
ということであるようです。

日本ではリクルートの「R25」という雑誌が、
首都圏の地下鉄の駅などで無料配布され、
雑誌業界に大きなショックを与えているようですが、
「信報」は「R25」の新聞版と考えて頂ければ
分かりやすいかと思います。

では、無料配布の「信報」は
何で儲けているのかと言うとやはり広告です。

現在発行部数は30万部とのことですが、
無料配布なら発行部数はいくらでも多くすることができます。
更に、毎朝地下鉄の駅で配るということから、広告のターゲットは
「地下鉄通勤のホワイトカラー」に絞ることができます。
発行部数が大きく、ターゲットを中産階級の
ホワイトカラーに絞ることができれば、
広告を出したい会社も多いでしょうし、
広告代金も高めの設定が可能なのではないでしょうか。

日本ではインターネットで
ニュースがタダで見られるようになってからは、
新聞販売部数は減少の一途を辿り、
新聞各社の経営はかなり厳しくなっているようです。
しかし、それに加えて更に
「信報」のようなニュービジネスが出現すれば、
日本の新聞業界はそのビジネスモデル自体を
根本的に変える必要に迫られるのではないでしょうか。


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2009年10月12日(月)

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