第1101回
「日中間の頭脳労働者の流動」

企業の国籍があまり意味を成さなくなっていく中で、
今後、個人が働く企業や働く場所もそれぞれの必要に応じて
益々多様化していくことが予想されます。

そんな流れの中で「京論壇」()が今年、
「日中間の頭脳労働者の流動」について取り上げたのは
大変興味深いことです。
なぜなら、私は日中間の頭脳労働者の流動は、
お互いの長所を生かし欠点を補い合い、
新たな価値を生み出すチャンスであると思うからです。

日本人の「サービス精神」、「完璧主義」、
「生真面目さ」、「チームワーク」は
日本ではほとんどの人が持っている資質ですので
あまり価値はありませんが、
中国に来ればそうした資質を持っている人が少ないだけに
大きな価値を生み出す可能性があります。

逆に、中国人の「合理性」、「決断の早さ」、
「柔軟性」、「独立心」は中国では当たり前ですが、
日本に行けば大きな価値を生み出すかもしれません。

例えば、サービス後進国・中国において、
日本人の「サービス精神」は非常に価値がありますし、
逆に、不合理なことが多い日本では
中国人の「合理性」が新たな発想を生み出す可能性もあります。

また、モノやサービスの仕上がりが
いい加減なことが多い中国では、
日本人の「完璧主義」は光りますし、
完璧さに拘るあまり
タイミングを逃してしまう人も多い日本では、
中国人の「決断の早さ」が功を奏すこともあるでしょう。

「差不多(ちゃーぶどー、大差ない)」が
口癖となっている人が多い中国では、
日本人の「生真面目さ」は大きな価値がありますし、
融通が利かない人が多い日本では、
ケースバイケースでどんどん対応を変える
中国人の「柔軟性」が必要となることもあります。

そして、「1人なら龍だが、3人集まるとブタになる」
という人が多い中国では、
日本人の「チームワーク」は大きな力となりますし、
逆に「3人集まれば龍だが、1人だとブタ」
という人が多い日本では、
中国人の「独立心」が役に立つこともあるでしょう。

こうした日本人、中国人が持つそれぞれの資質は、
自国ではあまり目立ちませんが、
相手国に行けばその特質は際立ちます。
今後、相反する資質を持った頭脳労働者が日中間で流動し、
自分の長所を発揮して相手の欠点を補い、
新たな価値を生み出すことは、
日中双方にとって非常に有意義なことなのではないか
と私は思います。


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2009年10月30日(金)

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