第1100回
企業の国籍

「京論壇」()でのレクチャーでは、
「従業員の国籍に拘る企業は競争力を失う」
という話の一方、
「従業員が企業の国籍に拘ることも今後、
あまり意味がなくなっていくのではないか」
というお話もしました。

それは、「京論壇」のメンバー同士の事前の討論の中で、
「同じ給料、同じ福利でも多くの中国人(日本人)が
日本企業(中国企業)ではなく欧米企業を
就職先として選ぶのはなぜか?」という疑問が出ていたからです。

この疑問に対する私の答えは
「そうした企業の国籍に拘る人は、
自分の能力に自信がないのではないか」というものです。

私は自分の能力に自信がない人ほど、
「国家」や「企業」への帰属意識が強いと考えています。
そうした人は自分の能力は棚に上げて、
オリンピックでの「国家」の活躍や、
業界内競争の中での「企業」の地位を、
あたかも自分自身の活躍や地位のように
捉える傾向があるように思います。

自分の能力に本当に自信がある人は、
就職する企業の国籍には拘らないのではないでしょうか。

そうした人たちにとって企業とは、
「自分株式会社の社長」である自分が、
業界の現状を学んだり、業務のスキルを上げたり、
業界の人脈を築いたりするステージに過ぎません。

彼らが就職する企業の条件は、
1.その企業で自分の能力が100%生かせるか、
2.その企業で働くことによって
  自分の能力を更に高めることはできるか、

であって、これらの条件が満たされれば、
日本企業だろうが、中国企業だろうが、欧米企業だろうが、
あまり関係がないのではないでしょうか。

実際、最近は資本や経営のグローバル化により、
国籍がはっきりしない企業も増えています。
中国人留学生だった宋文洲さんが創業して、
日本で上場したソフトブレーンは
日本企業なのか、中国企業なのか、
日本人である私が創業したものの、
社員の90%以上が中国人である当社は
日本企業なのか、中国企業なのか、
東証に上場している企業で、
外国人株主比率が50%を超えた企業でも
日本企業と呼べるのか、などなど。
考えれば考えるほど、
企業の国籍に拘るのがバカバカしくなってきます。

これから就職や転職を考えておられる方は、
「国家」や「企業」に頼らない「自分株式会社の社長」として、
企業の国籍に拘ることなく、
自分の能力を生かしたり高めたりするために、
最適な条件を備えた企業を選ぶ必要があるのではないか、
と私は思います。


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2009年10月28日(水)

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