第1111回
実は絶好調だった今年の中国国内経済

中国の今年1-9月の
経済成長を構成する3要素のそれぞれの
前年同期比の伸び率をもう一度見てください。
1.投資:+33.3%
2.消費:+15.1%
3.輸出:−21.3%

この数字は
「もし輸出が落ち込まず、せめて前年同期比並みだったら、
中国は今年、10%をはるかに超える経済成長を果たしていた」
ということを示しています。

私はこの数字を見て、今年前半
「中国経済も景気の減速で大変だ」と言われている中で、
ありがたいことに当社がそれほど
景気の減速を実感せずに済んだ理由がわかりました。

元々、日本人、欧米人向けの海外引越業界は、
「景気が悪いから自分で運ぶ」というわけにもいきませんので、
景気の影響は比較的受けにくい業界です。
しかし、倉庫業は物流の量が減れば、
顧客企業が倉庫を借りる面積も少なくなりますので、
景気の影響を受けやすいはずです。
にも関わらず、当社の倉庫は
「景気が減速している」と言われていた時期にもどんどん埋まり、
先日、おかげさまでとうとういっぱいになりました。

当社の顧客企業が紙の会社など、
輸出とは関係のないドメスティックな企業ばかりだった、
というのも幸いだったのかもしれません。
輸出と関係のない仕事をしている人にとっては、
実は今年の中国国内経済は絶好調だったのです。

一方の輸出は前年同期比で
20%以上落ち込んでいるわけですから、
輸出関係の仕事をしている人は
大変だったのではないかと思います。

実際、「世界の工場」の中心地として
輸出で中国経済を引っ張ってきた広東省は
壊滅的な状況となり、大量の工場が閉鎖、倒産、
職を失った「農民工(のんみんごん、出稼ぎ労働者)」が
続々と好景気に沸く内陸部の故郷に帰っていく、
という現象が見られました。

今年中国は8%成長を確保する見込みですが、
これはあくまで国家という
マクロの立場から見た平均の数字であり、
中国国民全員がそこそこの成長を享受した、
というわけではありません。

個人というミクロの立場から見た今年の中国経済は、
輸出に関係しない投資や消費関係の仕事をしている人は
前年より15-30%も売上が伸びるという
「天国」を享受することになりましたが、
輸出関係の仕事をしている人にとっては
20%を超える売上の減少という
「地獄」を見ることになったのです。


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2009年11月23日(月)

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