第1122回
航空チケット無料化時代の到来か?

今、日本で世間の耳目を集めている日本航空を始め、
世界の大手航空会社の多くが
軒並み苦しい経営を強いられている中で、
サービスを極限まで削ぎ落とし、
何しろ乗客を安く運ぶことに特化して、
大手航空会社のシェアを侵食する格安航空会社。

こうした格安航空会社は中国にも数社存在し、
その代表格が中国初の民間資本航空会社・春秋航空です。

春秋航空と言えば、上海→青島99元(1290円)、
上海→大連199元(2590円)などという
鉄道で行くよりも安い
衝撃的な価格の安売りチケットで有名な会社です。
今年の純利益は昨年比100%増の4000万元(5億2000万円)、
そして、上海万博が開かれる2010年5月までには
国際線の就航も計画しているのだそうです。

同社の安売りに対する執念はすさまじく、
機内食、飲み物のサービスなし、
荷物も機内持ち込みのみなのは当たり前、
更に、最近は座席のない「立ち乗りチケット」まで
検討しているそうです。
「飛行時間が1-2時間の短距離フライトならば、
立ったままでも問題はない。
立ち乗りの許可が下りれば、乗客数を40%増やすことができ、
チケットの値段を更に下げることが可能となる」
と同社の王正華社長は語っています。

春秋航空は更に、来年から
住宅や自動車の機内販売を始めるのだそうです。

同社はこれまでも客室乗務員が衣類、日用品、食品などを
機内で積極的に販売していたのですが、
高額商品の販売マージンでチケット価格の
更なる値下げに挑戦するのだそうです。

飛行機に乗って、それも格安航空会社のフライトで、
住宅や自動車を衝動買いする人はいないのではないか、
とも思うのですが、同社の安売りに対する執念には脱帽です。
同社幹部によれば、同社は機体への広告掲載や
機内通路への商品販売ブース設置も検討しているそうです。

そこまで徹底的にやれば
「航空チケットの料金を無料にしても利益が出る」
という航空業界に激震が走るような
新たなビジネスモデルができそうです。

その新たなビジネスモデルでは
春秋航空は会社名に「航空」という名前がついているものの
主な利益は物販から得る会社となり、
飛行機の運航は、移動という便益を
無料で提供することによってたくさんの人を集め、
1−2時間のフライトの間、
飛行機の機内というどこにも逃げられない状況の中で
乗客にセールス活動を行う機会を得るための
一手段に過ぎない、という
コペルニクス的な発想の転換が必要となります。
実際、同社の商品販売による利益は、
既に航空チケット販売による利益を
上回っているのだそうです。

消費者にとっては魅力的な無料の航空チケット。
しかし、立ち乗りのすし詰め状態の機内で、
1-2時間のフライトの間中、
客室乗務員から住宅や自動車を
しつこく売り付けられるとしたら、
私はおカネを払ってでも普通の飛行機に乗りたいです。


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2009年12月18日(金)

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