第1131回
失敗その2 トランクルーム事業

赤字覚悟で倉庫を埋め始めた後、
何とか倉庫貸し出しの平米単価を上げなければいけない、
と考えて始めたのがトランクルーム事業でした。

日本ではトランクルームサービスは
1990年頃から始まりました。
その後、企業の書類保管スペースや
個人の自宅の物置き代わりとしてマーケットを拡大し、
今では業界全体で1000億円以上の
市場規模があると言われています。

一方の中国には、
「トランクルーム」という概念自体がありません。
このため、ちょっとしたものを
倉庫で預かってもらおうとしても、
倉庫側は大きな面積を貸さないと商売になりませんので、
100平方メートル以下の面積では貸してもらえない、
というような状態でした。

そこで当社は、6800平方メートルの商業用倉庫のうち
700平方メートルをタイル張りの高級仕様に改装し、
そこに3立方メートルと6立方メートルの木箱を据え付け、
その中のスペースをお客様に自由に使って頂く、
というサービスを始めることにしました。
当時、北京の不動産価格は上昇を続けており、
「普段使わないものはトランクルームに預けて、
家賃が高い自宅スペースを有効に使おう」
という人が現れてもおかしくはないのではないか
と思ったのです。

料金は月170元(2,210円)から。
この値段で売り出しても、
倉庫として考えた場合の平米単価は、
企業相手の商業用倉庫の10倍以上になる見込みでした。

しかし、問題は中国にはまだ
「トランクルーム」という概念自体がないことでした。

日本ならば「トランクルーム」と言えば、
どんなサービスなのかすぐにわかってもらえるのですが、
こちらでは問い合わせを頂いても、
どんなサービスなのか1から説明しなければなりません。
当社もどんなサービスか理解して頂くために
「トランクルーム」の中国語訳として
「保管箱(ばおぐぁんしゃん)」とか、
「小倉庫(しゃおつぁんくー)」などという
新語を駆使して説明するのですが、
なかなかわかってもらえません。

そんなことをしている間に私は、
「これはものすごい額の広告費をかけて
サービスの存在を認知してもらわないと、
事業は立ち上がらない」ということに気付きました。
結果的に、トランクルームの売上では
広告費さえカバーすることができず、
倉庫を空で置いておくよりも
更に出血の量を大きくしてしまったのでした。

そこで当社はトランクルームの広告は打ち切り、
トランクルーム用に改装した700平方メートルの倉庫も
商業用倉庫として企業に貸し出し、
トランクルームは需要があれば対応するという方針に
切り替えることにしました。

同じぐらいの経済規模がある日本で
1000億円の市場があるものが、
中国では全く需要がない、ということは
あり得ないとは思うのですが、
やはり、中国でトランクルーム市場が立ち上がるまでには
もうちょっと時間がかかるのかもしれません。


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2010年1月8日(金)

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