第1134回
グーグルの中国市場撤退示唆はアメリカの警告か!?

今週、「グーグル、中国市場撤退も辞さず」という
衝撃的なニュースが世界を駆けめぐりました。

アメリカのインターネット検索エンジン最大手のグーグルは、
2009年、中国で22.7億元(295億円)を売り上げ、
中国の検索エンジン市場で32%と、
中国資本の「百度」(61%)に次ぐ第2位のシェアを誇っています。

しかし、昨年から傘下の動画投稿サイト「You Tube」や、
海外サイト検索などの接続停止を命じた
中国当局とのあつれきが強まっており、
今回、「中国政府が情報統制を緩和しない限り、
同国事業からの撤退も辞さない」という
異例の決意を表明するに至りました。

グーグルのドラモンド最高法務責任者(CLO)は、
「表現の自由をめぐる、世界的議論に発展させたい」と発言し、
体制批判の広がりを恐れる中国政府によって
実質的に中国市場への参入を阻まれている
会員制交流サイト(SNS)や、
事業縮小を余儀なくされた大手ネット企業など、
多国籍のネット業界の会社を巻き込む形で、
国際世論を喚起しようとしています。

これに対し、中国共産党宣伝部の幹部は、
ネット検閲を強化していることについて
「党や国の存亡が懸かっている」と強調し、
「グーグルが中国で事業を続けたいなら、
当局の方針に従っている「百度」を見習うべきだ」
としています。

グーグルの2008年の世界売上高は
218億ドル(1兆9,600億円)であり、
中国事業の比率は1%程度でしかありません。
しかし、インターネット人口が世界最大の4億人近くまで達し、
今後も急成長が見込まれる中国市場を手放すことは、
同社にとってもかなりのリスクであり、
あるアナリストによれば、
グーグルが中国市場から撤退することによる機会損失は
「年間数十億ドル(数千億円)規模」になると見られています。

世界最大手のインターネット企業とはいえ、
民間企業であるグーグルが1社で
中国政府に戦いを挑むのはあまりにも無謀であり、
背後にはアメリカ政府がいると考えるのが自然です。

私個人的には、
今回の件の原因となった中国政府の情報統制は、
ほんの表面上の理由に過ぎないと思っています。
中国政府が情報統制を緩和すれば、
宣伝部の幹部が言うように
中国が国家存亡の危機に陥るリスクが高くなることは、
アメリカ政府も十分に承知しているはずです。

そんな状況下で、あえて今回、アメリカ政府が
グーグルに中国政府に対する反旗を翻させたのは、
世界に「チャイナフリー包囲網」を形成する動きを見せて、
中国を牽制する狙いがあるのではないかと思います。

スイスの金融大手・クレディ・スイスの調査によれば、
中国の消費市場は2009年は1兆7200億ドル(155兆円)でしたが、
2020年には15兆9400億ドル(1435兆円)に拡大し、
世界に占める割合も5.2%から23.1%に上昇して
世界最大になるのだそうです。

こんな「地球上に残された最大且つ最後の巨大マーケット」を
中国政府が無条件で外国に開放するとは思えません。
必ず、巨大マーケットをエサに外交交渉を進め、
中国政府の言うことを聞いてくれた国にだけ市場参入を許す、
という手を使ってくることは容易に想像できます。

今回のグーグルの中国市場撤退示唆は、
アメリカ政府が中国マーケットに頼らない
「チャイナフリー包囲網」を
世界的に形成する動きを見せることによって、
「巨大マーケットをエサにした外交交渉をしても、
誰もあなたの言うことを聞かないようにできるんだよ!」
という警告を中国政府に発しているのではないか、
と私は思いました。


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2010年1月15日(金)

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