第1184回
急成長する中国の中古車マーケット

私が1996年に中国に来たときに驚いたのは、
20万km、30万km走っている車がたくさんあったことです。

日本では車検制度の影響もあり、
10年間または10万km走った車はほとんど無価値になり、
高い廃車料を払って廃車にするのが常識でした。
そんな国から来ましたので
「車って、壊れたところを直しながら大切に乗れば、
こんなに長持ちするものなんだ」
と感心した覚えがあります。

そこで商社マンとして当然考え付いたのが
「日本で10万km走って無価値になった車を、
廃車料無料で集めて、中国に持ってきて売る」
というビジネスです。
しかし、調べてみると、
中国は国内自動車産業保護のために、
中古車の輸入を禁止していることがわかりましたので、
このビジネスが実現することはありませんでした。

その後、中国にはマイカーブームが訪れますが、
マイカーを買う人も
「新車を買って動かなくなるまで乗り潰す」
というスタイルで乗る人が多かったため、
新車の販売店は街中でたくさん見かけるようになりましたが、
日本のような中古車販売店を見かけることは
ほとんどない状態が続いていました。

これは中古車は前のユーザーが
どんな乱暴な乗り方をしているか分からず、
買ったら頻繁に壊れて修理代がかさみ
かえって高くついてしまう可能性もあるため、
それならちょっと高くても新車を買った方が安心だ、
と考える人が多いからであると思われます。

実際、2009年の新車販売台数と中古車販売台数の比率も、
日本が488万台:718万台と
4:6で中古車販売台数の方が多いのに対し、
中国では1364万台:410万台と
8:2で新車販売台数の方が多くなっています。

とは言え、ここ最近、
中国の中古車マーケットも急成長しているようです。

2009年の中国の中古車販売台数の伸びは、
新車販売台数の前年比46%増にはおよばないものの、
前年比28%増と大きな伸びを見せました。
北京の中古車市場である
北京花郷中古車取引市場の販売業者によれば、
昨年2009年の市況は一貫して上昇傾向にあったが、
特に11月以降はその傾向が顕著で、
顧客は例年の2倍以上になったとのことです。

これはマイカーを買った人の考え方が、
「新車を買って動かなくなるまで乗り潰す」から
「今の車がまだ動いても、新型車に乗り換える」
に変わりつつあるため、年数の浅い良質な中古車が
市場に大量に出回るようになってきたことが
影響しているようです。
マイカーのオーナーに対するアンケートでも、
60%の人が「5年以内にマイカーを買い換えたい」
と回答しています。

マイカーオーナーが頻繁に
車を買い換えるようになりつつあり、
まだまだ新車販売台数に比べて
圧倒的に販売台数が少ない中国の中古車マーケットは、
これからが本番なのかもしれません。


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2010年5月12日(水)

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