第1207回
「淘宝網」の勝ち組は誰だ!

前回、「淘宝網」では、
良く売れているお店に人気が集中して、
更に売れる勝ち組スパイラルに乗っている、
というお話をしましたが、
そうした良く売れているお店が大儲けしているのか、
というとそれはまた別問題であるように思います。

例えば、「淘宝網」で最も売れている
日本産品(りーべんちゃんぴん)である
明治乳業の粉ミルク、「ほほえみ」(0〜9ヶ月用)と
「ステップ」(9か月〜3歳用)。
良く売れているお店では、1ヶ月の販売量が1,000缶以上、
売上にして15万元(200万円)を超える、という
単一商品としては結構な規模の商売になっています。

しかし、ネット販売の性質上、
「日本製の粉ミルクはたくさん売れる」という事実を
中国全土の人たちに公開しているようなものですので、
大量のお店が参入、
値段を見ると1元(13.5円)単位の
激しい価格競争を繰り広げています。

この激しい価格競争を勝ち抜いて
販売量を確保するためには、
利益を極限まで抑えなければなりませんが、
例えば利益が1缶1−2元(13.5-27円)しかないとすると、
月1,000缶売れても儲けは
1,000-2,000元。(1万3,500-2万7,000円)
1,000缶の粉ミルクを仕入れて、
購買者とネットでやり取りをし、
宅配便で中国全土に発送する手間を考えたら完全な赤字です。

以前、邱先生から成都のイトーヨーカドーの
5階のフードフロアに、
1人50元(675円)食べ放題の焼肉屋を開いた、
というお話を聞きました。

その焼肉屋は爆発的な人気を呼んで
長蛇の列ができたそうなのですが、
その盛況を見た地元の人たちが
周辺に1人40元(540円)食べ放題のお店を何軒も作り、
邱先生のお店もそれに対抗して
1人38元(513円)に値下げをしましたが、
儲けは値下げした12元(162円)の中にあったわけですから、
損益スレスレの商売を余儀なくされ、
結局閉店に追い込まれてしまった、とのことでした。

このように、中国では、
ちょっと儲かっている商売があると、
たくさんの人たちが目ざとくそれを見つけ、
同じモノやサービスを
本家よりも安い値段で提供してお客を奪う、
という価格競争の消耗戦を仕掛けてきます。

実店舗ならば、お店の内装や従業員の教育で、
価格競争が始まるまで少なくとも数ヶ月はかかりますが、
ネット販売の場合、仕入れルートを開拓するだけですので、
売れている商品が発見されて、そこに大量のお店が群がり、
価格競争の消耗戦になって、
最終的に誰も儲からなくなるまでのサイクルは、
実店舗よりずっと短くなります。

そう言った意味では、淘宝網のお店の中には
勝ち組は誰もいないのかもしれません。
確かに、淘宝網のサービスが始まってから随分経ちますが、
淘宝網でものすごく儲けた、という
「淘宝長者」のような人の話はあまり聞きません。

「価格競争加速器・淘宝網」における勝ち組は、
激しい価格競争のおかげでいつでも最安値でモノが買える
消費者だけなのかもしれません。


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2010年7月5日(月)

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