第1210回
「中国英利」って何者だ?

1ヶ月間にわたり、様々なドラマを生んだ
サッカーワールドカップ南アフリカ大会は、
昨日、スペインの優勝で幕を閉じました。

中国は参加できなかったこともあり、
北京の人たちはレストランの外に大スクリーンを設置した
仮設ビアガーデンでビールを飲みながら、
各国の選手が良いプレーをすると拍手と声援を送る、
という、ある意味非常に健全な楽しみ方をしていました。

自国チームの利害が絡まないと、
人というのはこんなにもおおらかに
スポーツ観戦を楽しむことができるんだ、
ということが今回良くわかりました。

さて、今回、ワールドカップの
テレビ中継を見ていて非常に気になったのが、
ピッチの周りの広告掲示板に
マクドナルドやコカコーラといった
世界ブランドと一緒に映し出されていた
「中国英利」という漢字の広告。
聞いたこともない会社名ですが、
中国チームが参加していないにも関わらず、
ワールドカップに広告を出している
「中国英利」って何者だ?と思い、
早速調べてみました。

広告を出していたのは、
中国の太陽電池パネル製造大手の
「英利緑色能源」という会社。
同社はワールドカップ南アフリカ大会の
公式スポンサーであり、
中国企業として始めてワールドカップの
スポンサーとなった企業なのだそうです。

スポンサーの費用は推定2億元(27億円)前後。
売上高が70億元(945億円)で、
昨年4.6億元(62億円)の赤字を出している企業としては、
かなり思い切った広告投資です。

さらに、同業者の尚徳電力などは
「太陽電池パネルの販売は主にB to Bの取り引きであり、
マクドナルドやコカコーラのような
多くの消費者を対象とするようなビジネスではないため、
スポーツイベントを通してブランドを宣伝することに
効果があるかは疑問である」と冷ややかな目で見ています。

しかし、私と同じように
「「中国英利」って何者だ?」と思った人は多かったようで、
ワールドカップが始まってから、
「英利」は検索サイト百度と谷歌(グーグル)中国で
最も人気のキーワードとなり、
注目度はワールドカップ開始以前より
425%も上昇したのだそうです。

こうした知名度のアップが
2億元以上の価値を生み出すかどうかはわかりません。
しかし、ワールドカップでの「中国英利」の広告は、
中国はサッカーはダメダメでも、
ビジネスでは世界の大舞台に台頭しつつある、
ということを、全世界のみなさんに印象付けるには
十分な効果があったのではないかと思います。


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2010年7月12日(月)

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