第1212回
急速にしぼむ中国不動産バブル

先日、北京の国際貿易センター展示場で行われた
「2010北京夏季房地産展示交易会」に行ってきました。

この展示会は、不動産開発会社などがブースを構え、
来場した投資家に
自社の開発プロジェクトを知ってもらうと同時に、
その場で商談まで行い不動産を買ってもらう、
という主旨のものです。

今回の展示会、一言で表現すると
「うら寂しい」という感じでしょうか。

私、3ヶ月前に開催された春季の展示会にも行ったのですが、
その時は入場料が10元(135円)であるにも関わらず
来場者が殺到。
やっとの思いで中に入ってからも
ところ狭しと設置された不動産開発会社のブースに
たくさんの人が詰めかけ、
まさに「熱狂」という言葉がふさわしい状態でした。

それが今回は入場料が2元(27円)に
大幅値下げになったにも関わらず、
入り口はガラガラ。
すんなりと中に入るとブースは全て埋まっておらず、
それでも不動産開発会社の売り子と来場者が
10:1ぐらいの割合で来場者の方が圧倒的に少なく、
会場全体が「いくらがんばっても売れないよ」という
無力感に包まれていました。

3ヶ月でこれだけ大きな変化を引き起こしたのは、
中国政府が4月に打ち出した不動産価格抑制政策です。

「何しろ借金できるだけ借金して、
値上がりする前に早くマンションを買え!」
という空気が支配する、
完全にバブル状態になっていた不動産マーケットに対し、
中国政府は「3軒目に対する融資禁止」、
「2軒目の最低頭金を30%から50%に引き上げ」
という融資規制の冷や水を浴びせかけました。

この冷や水の効果は絶大で、
中国国家統計局の発表によれば、
中国の5月の不動産販売価格は前月比では0.2%の上昇と
伸び率が4月の1.4%の上昇から大幅に減速、
一部のマーケットでは価格の下落が始まりました。

これにより、マーケットの空気は
「値上がりする前に早くマンションを買え!」から一転、
「どこまで下がるか様子を見よう」に変わりました。

このため、中国の不動産販売は激減、
上海に1万店ある不動産仲介店のうち、
5月の成約がゼロの店は約4,000店、
倒産、休業に追い込まれた店も
2,000店に上ると言われています。

急速にしぼむ中国不動産バブル。
この急激な空気の変化は、中国の不動産マーケットが
いかに実需とは関係のないところで、
市場の上がり下がりに敏感に反応する
ギャンブラーたちの博打場になっていたかを
表しているのではないかと思います。


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2010年7月16日(金)

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