第1214回
残業を始めた中国のサラリーマン

私が1996年に北京に赴任して本当に良かった、
と思ったことの1つに、
残業がなくなったことがあります。

私が丸紅の東京本社で働いていたときには、
朝7時に出社して夜11時頃まで働き、
休日出勤することも珍しくありませんでした。
毎月の残業時間は80-100時間にも上り、
「このペースで働いていたら、
早死にしてしまうのではないか」と思ったものです。

それが、北京に赴任してみると、
仕事の相手である中国の国有企業の人たちは、
午後5時に出発する社宅行きのバスに乗って
帰ってしまいますので、
午後5時以降は全く仕事にならず。
私も「残業をせずに定時に帰る」という、
東京で働いていたときには
あり得なかった生活をするようになりました。

その後、中国経済は急速な発展を遂げましたが、
日本の高度経済成長期の「モーレツ社員」とは違い、
中国のサラリーマンはそれほど
残業しているようには見えませんでした。
なぜなら、平日の夜9時頃に北京のオフィス街を通ると、
明かりがたくさん点いているのは、
日系企業が多く入っているビルぐらい。
他のオフィスビルは、
ほとんどが真っ暗だったからです。

ただ、最近は中国のサラリーマンも
残業をする人が増えているようです。

先日、天津の地方紙・毎日新報が同市で働く、
いわゆる「80后(ぱーりんほう)」と呼ばれる
30歳以下の若者100人を対象に行った調査では、
約60%の人が「恒常的に残業している」と答えています。

そして、80%の人が
「やりたくないのに強制的に残業させられている」と答え、
82%の人が「残業の後に胃の不快感、
目の乾きなどの身体的症状や、
モヤモヤするなどの心理的症状を感じる」と答えています。

おもしろい仕事に没頭するのは良いことではあるのですが、
長時間の残業は生活のバランスを崩し、
人生の質を著しく落とす、と私は考えています。
このため、中国のように残業なしで
会社が儲かり経済成長もできれば、
それに越したことはない、と思っていたのですが、
その中国でも残念ながら恒常的に、
それもイヤイヤ残業する人が増えてきているようです。

ただ、この調査結果をよく見てみると、
彼らの毎月の残業時間は20時間前後。
月20時間、ということは、
毎日1時間程度の残業ということです。
毎月80-100時間残業をしていた私から言わせれば、
その程度の残業で胃の不快感やモヤモヤを感じる、
というのは、ちょっと大げさであるようにも思います。

しかし、元々残業ゼロが当たり前だった
中国の人たちからすれば、
月20時間の残業、というのは、
かなりのオーバーワークなのでしょう。
中国で日本のような恒常的長時間残業や
過労死が社会問題になるのは、
まだまだ先のことなのかもしれません。


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2010年7月21日(水)

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