第1221回
「プラダ」が中国企業に!?

テスートと呼ばれる黒い強化ナイロン素材に、
逆三角のロゴプレートが付いたバッグや財布で有名な
イタリアの高級服飾ブランド「プラダ」。

生産原価に忠実な北京のニセモノマーケットでは、
バッグが100元(1,300円)、財布が50元(650円)前後と、
ホンモノの1/100ぐらいの値段で売られており、
「ブランドの価値というのは、かくも大きいものなのか...」
と改めて感心されられます。

先日、そのホンモノの方を作っている
イタリアの本家「プラダ」を、
中国企業が買収しようとしました。

「プラダ」を買収しようとしたのは、
上海に拠点を置く上海富客斯実業
(英語名:フォックスタウン)。
ブランド商品を値引き販売するアウトレットモールを
中国国内で5店舗経営している会社です。

同社は、2008年の金融危機で
プラダの資金繰りが悪化した際に
プラダ株13%を取得しましたが、
中国でぜいたく品マーケットが
急拡大しているのを受けて、
今回、「プラダ」の株を20%まで買い増し、
筆頭株主になることを狙ったようです。

同社は株式の追加取得に当たって、
現経営陣の続投を5年間保証する一方、
中国を中心とするアジアマーケット向けに
低価格商品を投入する計画を提案しました。
低価格商品って、まさか、50元とか100元の...。
いや、さすがにそんなことはないでしょう。

しかし、この提案に対して、
相手が中国企業であることを知った「プラダ」は、
「中国企業が買収すれば、ブランド価値が低下する」
として態度を硬化させ、
株式の売却金額を1億ユーロ(110億円)から
2.5億ユーロ(280億円)へ2.5倍に引き上げました。
商品価格の99/100を占めるブランド価値というものが、
いかに崩れやすい砂上の楼閣であるのかということを
「プラダ」の経営陣は熟知しているのでしょう。

結局、この売却価格引き上げにより、
買収交渉はご破算となりましたが、
今回の一件で驚いたのは、
世界的ブランドである「プラダ」を買収しようとしたのが、
COSCOやペトロチャイナのような大企業ではなく、
アウトレットモールをわずか5店舗しか
運営していないような中小企業だったことです。
今の中国ではこうした中小企業でさえも、
世界的ブランドを買収できるぐらいの
おカネを持っている、ということです。

今後、人民元が切り上がれば、
中国企業の購買力は更に増すことになります。
誰も知らない中国の中小企業が
世界の有名企業を買いまくる、などという時代が来るのも、
時間の問題なのかもしれません。


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2010年8月6日(金)

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