第1227回
日本へのメディカルツーリズムは流行るか?

最近、私の中国人の友人が2人、
立て続けにメディカルツーリズムの仕事を始めました。

メディカルツーリズムとは、
医療水準の高い国に行って検査や治療を受けると同時に、
その国で観光も楽しんでしまおう、という
医療と観光を組み合わせたツアーのことです。
私の友人2人は日本に留学経験があり、
日本の高度な医療と
温泉やショッピングを組み合わせたツアーを
中国人富裕層向けに販売しようとしています。

こうしたメディカルツーリズムの誘致には、
日本の観光庁も力を入れているようです。
メディカルツーリズムは、
単純な観光旅行よりも滞在日数が長くなる場合が多いですし、
その分、滞在期間中に日本に落としてもらえるおカネも
多くなりますので、観光立国を目指す日本としては、
新たな観光の形として注目しているようです。

中国にももちろん病院はありますし、
専門家の方によれば、
北京、上海など大都市にある大病院の
医療技術や医療設備は かなりレベルが高いそうです。

しかし、それでも中国人富裕層が海外に行って
医療を受けようとするのはなぜか?

まず1つは社会問題にもなっている
「看病難(かんびんなん)」、
つまり、中国では病人の数に対して
お医者さんの数が圧倒的に少なく、
なかなか病気を診てもらえないためです。

特に、名医とされる教授級の先生方の人気は高く、
前日から整理券が配られるのですが、
早朝から並んでいても、
それこそ「秒殺(みゃおしゃー)」ではないですが、
アッという間に整理券がなくなってしまうのだそうです。

ただ、この問題はおカネで解決ができます。
例えば、日本のODAで建設された北京の中日友好病院には
外国人向けの「国際医療部」という部署がありますが、
通常5元(65円)のところ200元(2,600円)の
挂号費(ぐあはおふぇい、診察費)を払えば、
中国人の人でも「国際医療部」専属の先生に
すぐに診てもらえますし、
一般病棟の先生に診てもらわなければならない場合でも、
看護婦さんが同行して、列の一番前に入れてくれます。

しかし、それでも解決できないもう1つの問題は、
お医者さんの多くが商売っ気が強すぎて、
本当に最適な診断なのか信用できないことです。
先日も私の中国人の友人が
ちょっと腰が痛くて病院に行ったのですが、
お医者さんにしつこく手術を勧められて辟易した、
と言っていました。

中国ではお医者さんの月給が最高位の教授級でも
4,000元(5万2,000円)前後と非常に安いのだそうです。
このため、薬や手術の歩合給で稼ぎたい、
という気持ちは理解できなくもないのですが、
中国のお医者さんにもヒポクラテスの誓いを
きちんと守ってほしいものです。

その点、日本のお医者さんの診断は100%信用できそうです。
そんなことから、中国人富裕層の
日本へのメディカルツーリズムは、
今後、大きく伸びるのではないか、と私は思います。


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2010年8月20日(金)

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