第1249回
観光は死に金、買い物は生き金

日本を訪れる中国人観光客が増え続けています。

昨年は100万人の大台を突破。
今年は7月に個人観光ビザの発給条件が緩和されたこと、
日本ツアーの値段が5泊6日で5,000元(62,500円)前後と
かなり安くなってきたこと、などから、
大幅に増加することが予想されています。

こうした中国特需を狙って、
日本の各都道府県は中国人観光客の誘致に必死ですが、
北京に来られる誘致担当者の方のお話を聞いていると、
地元の観光資源のアピールばかりしていて、
なんとなく中国人観光客の本当の需要を
捉えきれていないような気がします。

現時点では、中国人観光客は
観光よりも買い物を重視しています。

このため、買い物の額では、
平均で他の国から来る観光客の2倍も買うのですが、
旅行代金はケチりにケチる傾向にあります。
先日、ある日本の旅行会社の
北京駐在員の方とお話ししたときにも
「買い物に使うおカネを、少しでもいいから
旅行代金の方に回してくれたらいいのにな...」
とボヤかれていました。

これは多くの中国人観光客が
「観光に使うおカネは死に金だが、
買い物に使うおカネは生き金だ」
と思っていることに原因があるように思います。

観光に使うおカネは、
自分たちが楽しんでしまえばそれで終わってしまいますが、
日本で買ったモノを中国に帰ってから
親兄弟、親類縁者、友達や取引先、
政府のエラい人などにプレゼントすれば、
それは円滑な人間関係を構築するための投資となり、
買った値段の何倍ものリターンが見込めます。
中国人観光客にとって日本での買い物は、
大きなリターンが見込める投資、という
非常に重要なイベントなのです。

そういった意味では、日本の各都道府県は、
地元の観光資源をアピールするよりも、
中国人観光客のみなさんの買い物需要を綿密に調べて、
「お父様にはこれを贈られたらいかがですか」とか、
「職場の同僚の方へのプレゼントのために、
小分けしたこちらの商品はいかがですか」
といったようなプレゼント用商品の提案力を磨いて
他県と差別化をした方が、
結果的により多くのおカネを
地元に落としてもらえるのかもしれません。


←前回記事へ

2010年10月11日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ