第1255回
「流行っている店から買いたい」

「レストランに行ったら、
奥の席が空いているのに入り口に近い席に案内された」
「ファストフードのお店に行ったら、
オーダー待ちのお客さんが長蛇の列になっているのに、
他のレジを開かずにずっと待たされた」

中国に来て、こんな体験をされた方も
多いのではないでしょうか。
私も幾度となくこうした目に遭って、
その度に「やっぱり、中国のサービスレベルは
日本と比べるとまだまだ低いな」と思っていたのですが、
最近になって
「これはもしかすると、ワザとやっているのではないか」
と思うようになってきました。

中国では流行っているレストランほど
更にお客さんが入ります。
それは多くの人が
「お客さんがたくさん入っている店=おいしい店」
という判断をするからです。
このため、邱先生もおっしゃっておられますが、
中国で知らない街に行ってご飯を食べるときには、
地元の人で込み合っているようなお店に行けば、
まずハズレはありません。

逆にいくらおいしい料理を提供しても、
お客さんが入っていないと
「まずい店」と思われてしまいますので、
お店はウソでも流行っているように見せかけなければ、
客足がどんどん遠のいてしまいます。

こうしたことから、
レストランは入り口の近くにお客を座らせ、
外から見るとお客がたくさん入っているように見せ、
ファストフードのお店は窓口を絞って
長蛇の列を店の外にまで伸ばし、
流行っているように見せかけているのではないでしょうか。
どちらにしても、店に入ったお客さんを
他のお客の客寄せのために使うとは
けしからん発想です。

しかし、こうした「流行っている店から買いたい」という
中国の人たちの消費者心理は、
レストラン業界に限らず、
他のビジネスでも使えるかもしれません。

こちらから売り込みに行かない。
接客の際は無理に商品の購買を勧めない。
値引き要求には一切応じない。

もちろん、商品を買って頂くお客様には
誠実に対応すべきであるとは思います。
しかし、日本でもそうかもしれませんが、
「流行っている店から買いたい」という人が多い中国では特に
「お客さんは他にもたくさんいますが、買いたければどうぞ」
という姿勢の「殿様セールス」の方が、
モノがよく売れるし、客筋も良くなるのかもしれません。


←前回記事へ

2010年10月25日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ