第1259回
尖閣諸島問題で中国政府が強硬姿勢を貫いたワケ

私が「日中の相互理解」という話をすると、
必ず反論を受けます。

特に、尖閣諸島問題で日中関係が悪化してからは、
「理解もへったくれもあるか!」という意見も頂きます。

しかし、この問題にしても、
あえて、中国政府の立場になって考えてみれば、
日本に対して強硬な立場を
取らざるを得なかった状況も理解できます。

2005年の反日運動が制御不能状態となり、
いつ反日が反政府に変わるか分からない状況で
肝を冷やした中国政府は、
その教訓として「日本との摩擦が起こった場合には、
国民の誰よりも強硬な態度を取らなくてはいけない」
ということを学びました。

そのおかげもあって、
今回の尖閣諸島問題に対しての
大多数の中国国民の反応は
2005年のときとは比べものにならないほど冷静でした。
私はこれを「自分より酔っ払っている人を見ると、
酔いが醒めるの法則」と呼んでいます。

また、翌月に中国共産党の幹部会議である
5中全会(第17期中央委員会第5回総会)、
そして2012年には5年に一度の
中国共産党全国代表大会を控え、
太子党政権への権力の移行が確実視されている中で、
対日弱腰と批判されている現在の共青団政権が
日本に対して超強硬な姿勢を貫き、
党内の対日強硬派の支持を取り付けて、
少しでも巻き返しを図ろうした、
という可能性も否めません。

その後、中国の内陸部で反日デモが発生しましたが、
あれも当局の許可がなければできないこと。
どうして5中全会という共産党の大切な会議の開催期間中に
反日デモの許可が出ているのか。
これも日中関係を丸く収めようとしている現政権に対して、
対日強硬派が揺さぶりをかけているとしか思えません。

私たちは「中国が」とひとくくりにして語りがちですが、
中国は決して一枚岩ではなくて、
その中に政府対国民とか、共青団対太子党とか、
中央対地方といった様々な関係の構図が
複雑に入り組んでいるのです。

どちらにしても、中国の外交政策は全て、
国内事情がその源にある、と言っても過言ではありません。
中国の外交を理解するには、まずは、
中国の国内事情を深く理解する必要があります。

それを「中国政府の報道官が言ったこと」や
「ニュースで報道されていること」を額面通りに受け止めて、
怒ったり驚いたり安堵したりを繰り返していては、
いつまで経っても中国に振り回されるだけです。

私たちは中国の国内事情を良く勉強し、その上で
「この情勢で中国政府が一番嫌がることはなんだろう?」とか、
「日本の国益を損なわずに、
中国政府が受け入れやすいストーリーはないだろうか?」
といったことを考えていく必要があるのではないかと思います。


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2010年11月3日(水)

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