第1261回
「直通中南海」による官製ネット民主主義

共産党一党独裁国家・中国。

「独裁」という言葉を聞くと、
私はナチス・ドイツのヒットラーや
旧ソ連のスターリンの恐怖政治を思い出してしまうため、
1991年に初めて中国に出張に来たときには
かなりビビりながら来たのですが、
中国の人たちが結構楽しそうに暮らしているのを見て、
拍子抜けしてしまいました。

その後も、中国共産党の批判さえしなければ、
かなり自由に暮らせる状態が続いてきたのですが、
最近は収入増大により
国民がどんどん発言力を付けてきており、
中国共産党は逆に国民の声に
非常に気を使いながら政治をするようになっています。

中国共産党は、特にインターネット上で
反政府の世論が盛り上がることを極度に恐れており、
ネット規制をすると同時に、温家宝首相がネット上で
網民(わんみん、インターネット利用者)と対話するなど、
逆にネットを積極的に利用して、
網民を味方に付けようと必死になっています。

先日も中国政府は、胡錦濤国家主席など
中央の指導者への意見や要望を書き込めるネット掲示板
「直通中南海(ぢーとんちょんなんはい)」(※1)を開設しました。
「中南海」とは北京の故宮西側にある中国政府の所在地。
地方政府や各種の役所を通さずに、
直通で「中南海」に意見を言える、
というのがこのネット掲示板の特長です。

ということで、私、早速、
「直通中南海」にアクセスしてみました。

アクセスするとホンモノの中南海と同じように、
中国式の門構えの奥に中国共産党のスローガンである
「為人民服務(うぇいれんみんふーうー、
人民の為に奉仕する)」の文字が現れます。

そして、その門からサイトに入ると、
中国政府の指導者たちの顔写真が現れ、
意見や要望を伝えたい指導者を指名して、
メッセージを残すことができるようになっています。
掲示板開設後、国民からたくさんのメッセージが
指導者たちに送られたのですが、
やはり、胡錦濤国家主席と温家宝首相の
2人に送られたメッセージが圧倒的に多く、
胡主席には不動産価格高騰の問題、
温首相には教育改革への意見が
多く寄せられたのだそうです。

このシステム、きちんと運用すれば、
民主主義国家の数年に一度の選挙などよりも、
ずっと機動的に民意を反映させた政治を
行うことができそうです。
中国共産党にはこの「直通中南海」を
単なる国民のガス抜きなどと捉えずに、
集まった意見や要望を真剣に検討して政策に反映させ、
「ネット民主主義」という新しい形の
民主主義を作り上げていって頂きたい、と思います。

※1 「直通中南海」
http://cpc.people.com.cn/GB/191862/191863/index.html


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2010年11月8日(月)

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