第1265回
尖閣諸島問題、中国側は幕引きへ

先日、中国共産党機関紙・人民日報系の
国際ニュースを中心とした新聞・環球時報は、
尖閣諸島の領有権問題などに
中国が強硬な姿勢を取り続けることを
戒める社説を掲載しました。

社説は「中国人は現実を受け入れるべきだ。
日本などに実効支配され争いのある島は、
短期間で中国の支配下に置くことは難しい。
東アジアの領土問題で最大の利益を得るのは米国だ。
少ない労力で中国と周辺国家の関係を裂き、
アジアでの主導権を手に入れられる。
中国は領土問題で強硬であればあるほど
良いというわけではない。
現実的に問題を解決すべきで、
それができなくても東アジアの領土紛争を
米国の利益につなげてはならない」としています。

環球時報は中国共産党機関紙・人民日報傘下の新聞ですから、
この社説は中国政府の正式見解と捉えて間違いありません。

2005年の反日運動真っ盛りの時にこんな社説を掲載したら、
それこそ「中国共産党には任せていられない!」ということで、
反日運動が反政府運動に変わってしまったかもしれませんが、
今回の社説の、国民に対して物事をもっと
現実的、大局的に見るように促すその文面からは、
反日運動を拡大させずに平和裏に沈静化させた
中国政府の自信のようなものが伺えます。

日本側がせっかく沈静化した中国の反日運動に
また火をつけるようなことをしなければ、
今回の尖閣諸島問題については、
中国側はこれで幕引きとなるでしょう。

中国側から見れば、
今回の尖閣諸島問題がこれだけこじれた原因は、
1.日本側で中国政府の強硬姿勢を批判する発言や行動が起こる
2.それをインターネットで見た
  中国の網民(わんみん、ネット市民)が騒ぎ出す
3.中国政府は日本に対して強硬姿勢を取らざるを得なくなる
4.その強硬姿勢に対して日本側がまた批判する、
というネガティブなスパイラルが発生してしまったせいです。

このため、自分たちに矛先が向かないように
注意深く反日運動の沈静化を図っていた中国政府が
度々「日中関係悪化の全ての責任は日本側にある」
と発言していたのも、
そう考えると理解できないこともありません。

「国民の手前、強硬姿勢に出ざるを得ないんだ。
きついこと言うけどごめんねー」
「いやいやいいのいいの、事情はわかってるから。
日本側は過剰に反応しないようにするからさー。
その代わり日本の国益もしっかり守らせてもらうからねー」
中国側とこんなホンネの話ができる人が日本政府にいれば、
今回の問題の展開ももうちょっと変わったものに
なっていたのではないか、と私は思います。


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2010年11月17日(水)

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