第1272回
中国民衆は政治改革をどう考えているのか?

先日、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報に
「中国民衆は政治改革をどう考えているのか?」という
興味深い記事が掲載されました。

記事によれば、環球世論情勢調査センターが、
中国7都市の市民を対象にアンケートを実施したところ、
78%の人が「政治改革は当然必要」と回答したのだそうです。

しかし、政治改革の内容については、
「欧米式の民主政治体制を推進するべき」と答えた人が
15.5%に止まった一方、
「中国の特色ある民主政治を建設するべき」という回答は
57%に達しました。

また、「政治改革で注意すべき問題」という設問では、
「中国の基本的国体の下で改革推進を堅持すべきであり、
完全な欧米化はさけるべき」が70%、
「社会の安定を最優先するべき」が69%と多数を占めました。

このアンケートの結果をまとめると
「政治改革は必要だが、
欧米式の民主主義をそのまま導入するのではなくて、
社会の安定を保ちながらゆっくりと
中国独自の民主主義を形作っていくべき」
ということになります。
アンケートをしているのも、記事を載せているのも、
中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報ですので、
あまり説得力はないのですが、
それでも私個人的には、このアンケートの結果は
今の中国の大多数の人たちの考え方を
代表しているのではないかと思いました。

民主主義を絶対善と信じて疑わない
日本を始めとする西側先進国は、
中国共産党による一党独裁を悪と決めつけ、
中国に欧米式の完全民主主義の導入を迫っています。
先日も中国で投獄されている民主活動家が
ノーベル平和賞を受賞して物議を醸しました。

かく言う私も、日本で
「民主主義=絶対善」という教育を受けてきましたので、
初めて「悪の独裁国家・中国」に来たときには
「中国の国民は参政権も与えられず、
独裁者に抑圧された暗い毎日を送っている」
と思い込んで来ました。
しかし、中国に住んでわかったのは
「人は参政権がなくても結構幸せに暮らせる」
ということです。

歴史に「たら・れば」はないのですが、
もし、今回ノーベル平和賞を受賞した
民主活動家も参加した1989年の天安門事件で、
中国政府が学生たちの民主化要求を受け入れて
中国が民主化していたら、
これだけ多くの人が幸せに暮らせる国に
なっていたのでしょうか。
私にはどうしてもそうは思えません。
民主化後の混乱の後も、
近視眼的でポピュリズムな政策が増えて、
カオス状態が続いたのではないでしょうか。

もちろん、一党独裁体制には
汚職や無茶苦茶な行政という弊害がありますので、
政治改革は進めていかなければならないと思います。
しかし、アンケートの回答にもある通り、
その政治改革は、社会の安定を崩して、
多くの人を不幸のどん底に陥れるような形であっては
絶対にいけない、と私は思います。


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2010年12月3日(金)

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