第1273回
中国企業の顔をした日本資本

尖閣諸島沖の漁船衝突事件を発端とした反日運動で、
改めてチャイナリスクを認識した日本企業。
日本企業の間では、
中国マーケット一辺倒だった自社の海外戦略を見直し、
他のアジア諸国への展開にも力を入れて、
リスクの分散を図る動きも出てきているようです。

ただ、そうは言っても中国マーケットの潜在力は、
アジア地域のみならず、世界でもナンバーワン。
リスクはあったとしても、企業の将来の成長のためには
このマーケットは避けては通れません。

そうしたジレンマを抱えた日本企業におススメしたいのが、
「中国企業の顔をした日本資本」という方法です。

今回、四川省成都で発生した反日デモでは、
本当は邱先生の所有するビルですので、
邱先生のガラスなのですが、
日本を象徴するスーパーということで
テナントとして入っている
イトーヨーカ堂のガラスが割られました。
この成都のイトーヨーカ堂のガラスは
2005年の反日デモの時も割られています。

しかし、もしこのスーパーが
日本資本が入った「聯華超市」だったら、
反日デモの攻撃の対象にはならなかったはずです。
中国企業の株を買ったり、買収したりして
「中国企業の顔をした日本資本」になれば、
チャイナリスクを避けつつ、
中国マーケット成長の恩恵を享受することが
できるのではないでしょうか。

逆に、「日本企業の顔をした中国資本」は
ひどい目に遭う可能性があります。

2005年の反日デモの時には、
北京の100%中国資本の日本料理店が、
「日本料理店である」という理由だけで
反日デモの暴徒に店内を無茶苦茶にされました。
「同じ中国人なのにこんな目に遭わされるなんて、
本当にくやしい!」と涙ながらに語る店長の姿は、
日本でも大きく報道されました。
反日デモの暴徒にとっては、どこの国の資本だとか、
そういう難しいことはあまり関係なく、
何しろ目の前にある「日本」と名の付くものを
徹底的に破壊していくだけなのです。

何のリスクもなく日本企業が自社ブランドを
真正面から中国マーケットに浸透させることができれば、
もちろんそれに越したことはありません。
しかし、今後も何かをきっかけに、
日中関係が悪化する事態が発生する可能性が
非常に高いことを考えれば、
名より実を取る現実的な対応が必要となります。

反日デモ隊が持っているプラカードの紙も、
途中で寄ったスーパーも、そこで買った飲み物も
実は全て「中国企業の顔をした日本資本」が入っていて、
反日運動をしているのに、彼らが何を買っても、
知らないうちに日本企業を儲けさせてしまっている。
こんな状況に持ち込むしたたかさが、
今の日本企業には必要なのではないか、
と私は思います。


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2010年12月6日(月)

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