第1309回
知らないうちに払わされている増値税

中国政府の財政の根幹を担う増値税。

しかし、この増値税、
B to Bの企業間取引をしている段階では
明確に課税が表示されているのですが、
B to C、つまり小売から消費者に販売される際には、
課税の表示が消えてしまいます。

このため、中国の消費者が買い物をするときに、
付加価値税を払っているという意識を持っている人は
ほとんどいないと思いますが、
実際には知らないうちに日本の3倍以上の
付加価値税を負担させられているのです。

これは中国政府が税収を確保しながら、
且つ、国民に税負担を意識させないための
愚民政策の1つであると私は認識しています。
また、一度17%という税率を国民が認識してしまうと、
将来、税収が足りなくなって
付加価値税率を上げなければならないときに、
今の日本のように、国民から
強い拒否反応が起こる可能性がありますが、
国民に税負担の意識がなければ増税も簡単です。

昨年8月、中国の税関は、
海外旅行に行った人が買った
中国国内での販売価格よりも安い「iPad」に
一律1,000元(12,500円)の関税を課すなど、
海外から入ってくる製品に対しての課税を
大幅に強化しました。

中国税関当局は、高額IT商品やぜいたく品の
密輸防止を規制強化の理由に挙げており、
網民(わんみん、ネット市民)の反応も
「規定では関税が課されるのは5,000元(62,500円)以上なのに、
どうして海外で3,000-4,000元(37,500-50,000円)で買った
iPadが課税されるのか」というところで止まっています。

しかし、前回お話ししたように、
香港で3,888香港ドル(40,800円)で買ったiPadも、
中国入国の際に1,000元の関税が課されれば、
中国国内での販売価格3,988元(49,900円)を上回り、
海外でiPadを買ってくるメリットがなくなります。

これで外に逃げかけた内需を国内に引き戻そう、
ということもあるかと思いますが、
中国政府の課税の目的は
もっと他のところにあるような気がします。

中国政府は
多くの国民が海外旅行に行くようになって、
海外で国内価格よりも安い
「Made in China」の製品を見つけた人が、
そうした製品を大量に国内に持ち込むことを
恐れているのではないでしょうか。

そして、その現象を見た多くの国民が
「そもそも、「Made in China」の製品が
中国国内で買うより国外で買う方が安い、
というのはおかしい」という疑問を持って、
いろいろと調べていくうちに、
「中国の消費者は知らないうちに
17%の増値税を負担させられている」
という事実に気付き、
納税意識を持ってしまうことを防ぐのが
中国政府の本当の目的なのではないか、
と私は思います。





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2011年2月25日(金)

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