第1310回
「給力」ってなんだ!

最近、「給力(げいりー)」という言葉が
やたらと目に付くようになってしまいました。

それはある日、1日に3回も「給力」を見てしまってからです。
その日の朝、幸福大厦の1階食堂で朝食を食べていたところ、
食堂のテレビで流されていた鳳凰電視台をふと見ると、
女性キャスターが「給力」と書かれたフリップボードを持って、
何やら解説をしていました。

その後、昼、吉野家に行って売り出し中の
牛丼と半熟の温泉たまごのセットを頼んだのですが、
その食べ方の解説を見ると、
牛丼に温泉たまごを入れてかき回せば
「多給力呀(どぅおげいりーや)」、だと書いてありました。
そして、その帰り道、バス停の広告の中に、
マクドナルドが新しく発売した
辛いチキンカツバーガーの宣伝があったのですが、
そのキャッチコピーは
「不辣不給力(ぶらーぶげいりー)」でした。

「給力」ってなんだ!

久々に始めて見る単語に遭遇した私は、
さっそくオフィスに帰って辞書を調べてみたのですが、
中国語の辞書には「給力」などという単語は載っていません。

そこでインターネットで調べたところ、
「給力」は「すごい」、「すばらしい」、「かっこいい」、
逆に「不給力」は「すごくない」、「すばらしくない」、
「かっこよくない」という意味だということがわかりました。

この言葉は元々、中国北部の方言なのだそうですが、
日本のギャグマンガの中国語版で使われたことをきっかけに、
ネット経由で中国全土の若い網民(わんみん、ネット市民)に
ネットスラングとして広がり、
その後、ニュースで取り上げられたり、
企業の宣伝に使われたりするぐらい
一般的になっていったようです。

更に、先日は中国で最もお堅いメディアとして知られる、
中国共産党機関紙・人民日報までもが、
1面トップ記事の見出しに
「江蘇給力、"文化強省"」と新語「給力」を使用し、
多くの国民を驚かせました。
「ネット民主主義国家」となった中国で、
「親しみやすい中国共産党」を網民にアピールする、
党中央宣伝部の涙ぐましいまでの努力を感じます。

この「給力」、
日常生活の中で実際に使ってみると非常に便利で、
使い始めるとクセになります。
何しろ、良いことには「給力」、
悪いことには「不給力」と言っていれば済みますので、
こんなにラクなことはありません。
「水は低きに流れ、人は易きに流れる」。
「給力」、「不給力」が瞬く間に燎原の火の如く
中国全土に広がっていった理由も、
使ってみて良くわかりました。

ただ本来、中国語には
「すごい」、「すばらしい」、「かっこいい」などの
感嘆を表現する言葉はそれぞれあります。

私は外国人の方が乱れた日本語を話すのは
あまり好きではありませんので、
私自身も中国に住む外国人として、
今後は何でも「給力」、「不給力」で済ませず、
正しくて美しい中国語を話すように
心がけていきたいと思います。





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2011年2月28日(月)

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