第1311回
「中国脅威本」から「中国理解本」へ

昨年2010年、中国の国内総生産(GDP)は
日本を抜いて世界第2位となりました。

これにより、日本では改めて
中国に注目が集まっているようですが、
日本人の中国に対する見方は、
ここ数年で劇的に変化しているように思います。

それは出版される中国関係の
本の題名を見ていてもわかります。

以前は、日本の常識とは違う中国の非常識さを
おもしろおかしく書いた「中国非常識本」や、
中国はいつか崩壊すると言い続ける
「中国崩壊本」が全盛でした。

本というのはたくさん売るためには、
多くの人が読みたいと思うような
内容にしなければいけませんので、
本の題名から類推するに、当時の日本人には
「中国は非常識で仕様がないなぁ」とか、
「なんだか中国は最近調子が良いみたいだけれど、
絶対にいつかコケるぞ」と言ったような、
どちらかと言うと上から目線な気持ちが
あったように思います。

しかし、中国はどんどん非常識でなくなり、
いつまで経っても崩壊せず、
ついにGDPで日本が中国に
追い抜かされてしまうところまで来ると、
いよいよ上から目線を保つことができず、
逆にいつか日本は大国に成長した中国に
やられてしまうのではないかという
「中国脅威本」が増えてきました。
これは経済に限った話ではなく、
昨年9月の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件のときに、
中国政府が強硬な姿勢を貫いたことによる影響も
大きいように思います。

「中国脅威本」が主張するように、
日本はいつか中国にやられてしまうのでしょうか?

中国の内側から見ている私に言わせれば、
今の中国政府は国内の問題を解決していくのに手一杯で、
日本をやっつけている余裕など全くありません。
仮に、日本に対して強硬な姿勢を取ることがあったとしても、
それは国内情勢を安定させるための国民に対するポーズであり、
相手国が日本であろうが、アメリカであろうが、
それ自体はあまり関係ないのです。

日本がこれから進むべき道は、少子高齢化社会を乗り切るべく、
中国に依存することなく、中国の経済成長を自国の経済に
取り込むことだと私は思っています。

そのためには、中国を上から目線や脅威という、
色眼鏡を通して見ていてはいけません。
今後は、「中国脅威本」ではなく、
もっとニュートラルな視点から、
中国という国の現状をストレートに理解するための
「中国理解本」がたくさん売れるような状態に、
日本人の中国に対する見方を
変えていく必要があるのではないかと思います。





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2011年3月2日(水)

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