第1313回
農民工争奪戦勃発!

ここ数年、毎年春節の休みになると、
中国沿海部の会社経営者は心配で夜も眠れなくなります。
なぜなら、春節の休みで
内陸部の故郷に帰った従業員がそのまま帰って来ず、
春節明けに会社の営業を再開することが
できなくなるかもしれないからです。

この農民工(のんみんごん、出稼ぎ労働者)の不足は
中国語で「民工荒(みんごんほぁん)」と呼ばれ、
近年、珠江デルタや長江デルタなど
沿海部の工場経営者を悩ませてきましたが、
今年は事態が更に悪化、
春節後、激しい農民工の争奪戦が繰り広げられているようです。

「民工荒」の状態を更に悪化させたのは、
中国内陸部の急速な経済発展です。

2009年、中国政府は金融危機対策として、
将来の西部大開発計画を前倒しする形で
大規模な財政資金を中国内陸部に投入しました。
このおかげで内陸部の経済は急速に発展、
労働者に対する需要も非常に強くなっています。

このため、重慶市、四川省成都市、湖北省武漢市など、
今までは農民工を送り出す側だった内陸部の大都市の企業は、
春節の休みで地元に帰ってきた農民工に対し
「故郷からの近さ」や「同郷意識」をアピールし、
沿海部に戻らず地元で就職するように
引き留めを図っているのだそうです。

こうした内陸部の企業の動きに対し、
沿海部の企業も負けてはいません。
賃金引き上げや労働条件の改善など、
あの手この手で職場復帰を促しているようです。
帰省した従業員を迎えに行くためにバスを手配する企業も多く、
上海からは400台のバスが各地方に派遣されたのだそうです。
至れり尽くせり、下にも置かない対応です。

こうした争奪戦が繰り広げられる中、農民工の賃金も急上昇。
中国共産党機関紙・人民日報によれば、
2010年の農民工の月平均収入は1,690元(2万1,000円)と
この5年間で2倍近くまで上昇し、
就職超氷河期で低迷している
大卒初任給2,337元(2万9,000円)に迫る勢いです。

日本の高度経済成長期、
地方の農村で中学校を卒業した後、
東京や大阪などの大都市に集団就職した若者は
「金の卵」と呼ばれ、
日本の経済発展に大きく貢献しましたが、
現在、高度経済成長真っ只中の中国では、
農民工はまさにみんなが奪い合ってでも欲しがる
「金の卵」なのです。

ちなみに当社にも「金の卵」が40人ほどいるのですが、
春節休暇後、1人も欠けずに帰ってきてくれました。
他社が激しい争奪戦を繰り広げている中で、
なんともありがたいことです。
心から感謝、感謝です。





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2011年3月7日(月)

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